検索窓
今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:16,496 hit

〜129〜 ページ32

阿鼻叫喚。
 地獄絵図。
 死屍累々。
 まさしくそんな光景。

『あ"ぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!』
『ぐ、かはッ』
『や、やめてくれ……』
 悲痛な叫び声。

 ___痛い

 戦争だ。……いや、違う。一方的な殺戮だ。魔法を使った軍隊が、他国を侵略している。他国の兵士たちは、悶え苦しみながら死んでいく。

 ___痛い痛い

 対して、最前線にいる魔法兵も、口から吐血してたり、地を這っていたりと今にも死にそうだ。魔力が枯渇しかけているのだ。魔力は生命力。生命力を一気に消費すれば、命に関わる。それでも彼らは魔法を使い続けていた。口の端から呻き声を漏らしながらも、これが自分の使命と言わんばかりに。

 ___痛い痛い痛い痛い痛い痛イいたイいたいイタイ

「う、ぁぁぁぁぁぁぁああああああ"あ"あ"ッッッ!!!!」

 ……そんな戦場にある、あらゆる苦痛の感情が、全て私に流れ込んでいる。無理矢理、何リットルもある濁った水を飲まされるような息苦しさが襲う。全身を圧迫するような感覚が大きくなる。ギシギシと体が軋む音さえ聞こえてきそうだ。

 そうだ。私がいるここは、時空の狭間。何もかも分からなくなる暗闇。あらゆる"時"に刻まれた感情が、あるいは激しく、あるいは鋭く、あるいは穏やかに、揺蕩う。ここはそんな場所。
 だから、他人の感情が、容赦なく私を押し潰そうとしてくる。
 さっきは、誰かの感情が大き過ぎて、それしか感じてなかった。

「や、めて……私に入ってこないでよぉ……たすけ、て、……っ、あ……」

 名前。
 大切なあの人の名前。
 思い出せない。
 記憶にぽっかり穴が開いている。いくつもいくつも開いている。
 私の中心にいた、"彼"が思い出せない。

 その事実は、他人の感情に圧殺されそうになっている事よりも、何よりも、酷く私を苦しめる。

「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!!」
 感覚のない手で頭を掻き毟る。
「私はっ、あなたの事が、好きなのにっ……」
 どこに行けばいいの。このどうでもいい他人たちの感情の中に、あなたの感情はあるの?
 私は、あなたのところに行かなきゃいけないのに……!

 足を止める。どこが後ろか分からなかったけど、振り返った。そちらへ走る。

『助けてくれ!』
『苦しぃ……』
『殺せ!』
『愛してる』
『呪え、呪え……!』



『マイカ』

 ……見つけた……!


「セレン!!」

〜130〜→←〜128〜



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (33 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
17人がお気に入り
設定タグ:CSS , ファンタジー , 恋愛   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

たまご(プロフ) - めっちゃ面白かったです!アスラ君、大好きでした! (2019年9月26日 7時) (レス) id: 4b6840f9b9 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - チェシャ猫さん» ありがとうございます(*^^*) アスラ君、好きになってもらえて良かったです! (2019年3月24日 2時) (レス) id: a49b6f3827 (このIDを非表示/違反報告)
チェシャ猫(プロフ) - 完結おめでとうございます!いやぁ、めでたしめでたしですね!!アスラ君最後まで大好きでした!お疲れ様でした!! (2019年3月23日 15時) (レス) id: 0582223455 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - なななさん» あなたの事は知ってますよー。コメントどうも! (2017年5月5日 21時) (レス) id: c03204db58 (このIDを非表示/違反報告)
ななな - すっごくおもしろいです!!!!! めつちゃ最高(*゚▽゚*)更新楽しみにしてまふ(( (2017年5月5日 14時) (レス) id: b05e83a60b (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:寒極氷化(かんごく ひょうか) | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/orazu/  
作成日時:2016年4月26日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。