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「うっわ、やっぱり古いね。ってこれ、火事の時に持ってたヤツじゃない?」
セレンから見せてもらった黒い日記は、かなり年季が入っていた。よくここまで保存できてたね。魔法サマサマってとこかな。
「よく覚えていたね。そうだよ。……これだけは、盗られたくなかった」
目を細めて、表紙を撫でるセレン。余程大切なんだ……燃やしてやろうかな……なんて。まぁ、そんな事は……
「燃やさないでね?」
「……おにーさん。いつの間に心を読む魔法を発明したわけ?」
「あれ、今の冗談のつもりだったんだけど」
嘘吐け。セレンが冗談を言うなんて、それこそ何かの冗談みたいだ。ボクの知るセレンはそれくらい面白みに欠ける人間だったと思うんだけど。……と言うのはその後の会話が面倒そうだったので、
「おにーさんでも冗談言えるんだ。意外。ていうか、しないし」
と、代わりに言った。
「そう、それなら良かった」
本気でホッとしてるなぁ。読心したかどうかはともかく、やっぱりアレ冗談じゃなかった。
「じゃあ、はい」
ボクに日記を渡してきた。読んで良いって事なんだろう。受け取ると、ボクは日記を開いた。
少し角ばった、癖のある字。これが初代マギアノ・カレアの字……
「これ旧字! まぁ、何百年も前の人だから当然だけど」
「あ、もしかして読めない?」
「いや読めるけど。でも、おにーさんほどスラスラ読めないと思うから、時間はかかるよ」
「大丈夫」
……改めて、1行目を読む。それは、こんな不吉な過去形で始まっていた。
『私は幸せだった』
・・・
『私は幸せだった』
ノイズ音がした。ノイズだけど、鮮明だった。
依然として私は平衡感覚を失ったまま、暗闇の中なのに映像を見ていた。
脳がぐるぐる回ってるみたいでキモチワルイ。誰の感情? あぁ、カレアって言ってたな。この人の感情は黒くて鋭くて硬質で寒気がする。でも何でか共感できる。一番大きくて苦しいのに、一番受け入れる事ができる。おかしいよ、絶対におかしい。こんなに辛いのに。
『あの人がいれば私は幸せでいる事ができた。でもあの人はもういない。その事実を私は受け入れなければならない』
カレアは冊子にそんな文章を書き連ねていた。酷く冷えた表情をしていた。人形みたいだと思った。
『あの人を殺した世界に復讐しよう。そしてそれをここに書き連ねよう。だからこれは復讐日記……そして、研究日記でもある』
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たまご(プロフ) - めっちゃ面白かったです!アスラ君、大好きでした! (2019年9月26日 7時) (レス) id: 4b6840f9b9 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - チェシャ猫さん» ありがとうございます(*^^*) アスラ君、好きになってもらえて良かったです! (2019年3月24日 2時) (レス) id: a49b6f3827 (このIDを非表示/違反報告)
チェシャ猫(プロフ) - 完結おめでとうございます!いやぁ、めでたしめでたしですね!!アスラ君最後まで大好きでした!お疲れ様でした!! (2019年3月23日 15時) (レス) id: 0582223455 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - なななさん» あなたの事は知ってますよー。コメントどうも! (2017年5月5日 21時) (レス) id: c03204db58 (このIDを非表示/違反報告)
ななな - すっごくおもしろいです!!!!! めつちゃ最高(*゚▽゚*)更新楽しみにしてまふ(( (2017年5月5日 14時) (レス) id: b05e83a60b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:寒極氷化(かんごく ひょうか) | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/orazu/
作成日時:2016年4月26日 0時