手 ページ44
.
お母さんとお兄ちゃん。
天秤になんて掛けられないし、
どれだけ考えて悩んでも答えは出ない。
こうしてお母さんの字を見ていると、あの、
昔程じゃないけど、今もカサカサしてる手を思い出してしまう。
冬はそれが痛くて、頬を撫でられた時
『痛い』って言っちゃって、
そしたら『ごめんね？』って笑って……
その手が私を一生懸命育ててくれた証拠だったのに。
小学生の頃、昼間はパートに行って、夜私が寝る頃にまた家を出てスナックで朝方まで働いて、
朝私が起きるとまだ寝てたけど、必ず朝御飯を用意しておいてくれてあって、
家を出る時にはボサボサの頭で起きてきて
『行ってらっしゃい』って見送ってくれた。
中学位の時に昼間のパートを辞めて看護学校に通いだして、それでも家計の為に週末はスナックでバイトして、
そうして休み無く働き続けて私を短大まで行かせてくれた。
『何で看護士になったの？』
って、進路を考えてた時に聞いた事がある。
『医者と結婚すれば働かなくてもいいでしょ？
そしたらあんたともっと一緒にいられるじゃん』
冗談みたいに笑いながらそう言ってたけど、
それがいつまでも私の頭に残ってるって事は、やっぱりあの頃の私もお母さんと一緒に居たいって思ってたんだろうな。
彼氏ができたら家に連れてくるのは、そうでもしないと会う時間が無いからってのも知ってた。
別れてやけ酒して酔っ払って言う口癖は、
『あたしはね、あんたさえ居てくれればいいの！
あんたがいっちっっばんの宝物なんだから！』
思春期に聞いたその酔っ払いの言葉が、どれだけ私という人間の存在を救ってくれたか、
きっとお母さん自身は知らないだろう。
そして宣言通り、もう私が実家を出る前からずっと付き合ってる彼氏はお医者さん。
"蛙の子は蛙"
こんな諺があったな……。
まさか全く同じ道を行くとは思わなかったし、そうならないように生きてきたのに……。
でも今お母さんの言葉を何度も繰り返し読んで思うのは、嫌悪でも呆れでも無く、尊敬と共感。
それから……
私を見つめる大好きな二人の優しい顔。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 65人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
けぃたん(プロフ) - 続き読みたいです (2020年12月16日 8時) (
レス) id: f3a839ab97 (このIDを非表示/違反報告)
みんはは(プロフ) - お忙しいことでしょうが更新を楽しみにしております(^^) (2018年10月30日 17時) (レス) id: 2600b841f9 (このIDを非表示/違反報告)
サラン(プロフ) - みんははさん» さらんさんがんばります(*´▽｀*) (2018年9月14日 0時) (レス) id: a36c8f7d95 (このIDを非表示/違反報告)
みんはは(プロフ) - 更新ありがとうございます。主人公ちゃんついに決心しましたね(^^)主人公ちゃんもレオくんもサランさんも←がんばって！ (2018年9月13日 23時) (レス) id: 2600b841f9 (このIDを非表示/違反報告)
サラン(プロフ) - ゆゆさん» ゆゆさん、まぁまぁ落ち着いて(ﾉ^∇^)ﾉ取り敢えずLEOさんの体でも眺めてもう少しお待ちを 笑 (2018年9月7日 0時) (レス) id: a36c8f7d95 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：サラン | 作成日時：2018年6月6日 22時
