247.君が思い出すまで ページ47
「残念ながら違う。
それは杜若(カキツバタ)という花だ。」
「カキツバタ？」
「同じアヤメ科の花で、水辺に咲く花なんだ。」
アヤメととても似ている。
「それ、開けてみて。」
私は杏寿郎さんの言う通りジュエリーケースを開ける。
そこには白いアヤメの形をした小さな
イヤリングが入っていた。
「素敵…。」
「それは白いアヤメだ。
つけてあげよう。」
杏寿郎さんはそう言うと、イヤリングを取り出して
私の耳につけてくれた。
「よく似合っている。」
「頂いてしまっていいのですか？」
杏寿郎さんはまっすぐに私を見つめ、目を細めて微笑んだ。
「君にあげたいんだ。
カキツバタの花言葉は
"幸せは必ず訪れる"」
そう私に告げると、彼は右手で私の頬に触れた。
「耳にしている
白いアヤメの花言葉は
"あなたのことを大切にします"」
胸がギュッと苦しくなる。
でもそれは幸せな痛みで…
「嬉しい。とても幸せです。」
「A、愛している。」
「はい。私も。」
杏寿郎さんは私の頬から顎に手を滑らせると、
顎をそっとあげた。
「ちゃんと言ってはくれないか？」
その艶やかな瞳に私は弱い。
「私も、愛しています。」
ゆっくりと杏寿郎さんの顔が近づく。
目を閉じて唇が触れるのを感じる。
二人の影がそっと離れると、
杏寿郎さんはもう一度私を抱きしめた。
「君は俺の言葉に"待っている"と言ったのに、
俺が待つ形になってしまったな。」
「はい…？」
杏寿郎さんは、私の耳に口を寄せて
優しく囁いた。
「待っていたんだ。
君が思い出すまで。」
【完】
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狐姫(プロフ) - sayaさん» sayaさん、ご感想をありがとうございます！一気読み嬉しいです〜！勿体無いお言葉まで…感謝の気持ちでいっぱいです。。ぜひ、他の作品でもお待ちしておりますね！最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。 (10月20日 19時) (
レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
saya(プロフ) - はじめまして！キュンキュンしたり、切なくなったり、ホワホワしたり、で一気読みしてしまいました。とまりませんでした。このお話と出会えてよかったです。他の作品もこれから読まさせて頂きます！！ (10月19日 23時) (レス) id: 7154e48ffe (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - もにょさん» もにょさん、最後までお読みいただき、そしてコメントをしてくださり、ありがとうございます！最高な作品だなんて…幸甚の至りです！またいつでもお越しくださいね。 (5月6日 8時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
もにょ - ハンカチがびっしゃびしゃになる程泣きました。甘く切なく幸せな夢をありがとうございました。最高な作品に出会えて幸せです。長編お疲れ様でした！ (5月6日 4時) (レス) @page48 id: c62f6d1e54 (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 桜月夜さん» 桜月夜さん、感想ありがとうございます！感動してくださるなんて光栄です！素敵なお言葉までありがとうございます(*˙˘˙*) (2021年11月19日 17時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狐姫 | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/kohime_yume
作成日時：2021年11月5日 19時
