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233.夢かうつつか ページ33

杏寿郎さんが任務に出かけてから

 2日目の夜になった。


 前の話から推測するに、

 きっと無限列車という列車に乗ったから

 今回も帰りは遅くなるのかもしれない。


 明日の朝は帰ってくるかもしれないから、

 早起きをして杏寿郎さんの大好きな

 さつまいものお味噌汁を作ろう。


 私は冷える足先を布団の中で擦りながら瞼を閉じた。





 明け方、日が昇る頃、戸の開く音がした。


 杏寿郎さんだ。


 私は寝ぼけ眼で自室を飛び出して玄関に向かう。


 しかし、玄関には誰もいなくて…


 でも、確かに戸の開く音がしたので


 私はおもむろに玄関の戸を開けて裸足のまま外へと出た。




 外の空は淡い水色で、

 日が昇る方に向かって

 薄い黄色からオレンジへと色を変えている。


 日の光を浴びた雲は優しい桃色で、

 その影は紫色を帯びていた。


 地は霧に包まれ、幻想的なその景色はまるで夢のようだ。



「A」


 景色に夢中なっていると、横から声がした。


「杏寿郎さん?やはり戻られたのですね!」


 私がそう言うと、何故か杏寿郎さんは


 太陽の昇る方に向かって歩き出した。


「杏寿郎さん?」


 どんどん歩みを進める彼を私は必死に追いかける。

 炎の羽織をなびかせて、彼は進んでいく。


「…待って。どこへいくのですか?」


 杏寿郎さんは声をかけても振り返らず、

 歩みを止めてくれない。


 裸足の私のつま先はもう感覚がない。


 やっと止まってくれたと思うと、


 そこは二人で桜や紅葉を見た高台だった。


 私は肩で息をしていた。


「…杏寿郎さん?」


 杏寿郎さんはゆっくりとこちらを振り返った。


 とても穏やかな顔をしている。



「A、時が来てしまった。」



「…はい?」



「別れの時だ。」



 何を言っているの…?



「…どういうこと?」



「俺はもうこの世にはいない。


 君を置いていくことを、どうか許して欲しい。」


 この世には…いない?


 お腹のあたりが空っぽになっていく感覚がした。


 瞳からは涙がこぼれ落ちていく。



「A、…俺は君を愛している。


 だから、どうか幸せに生きて。


 もう俺は君の頬を伝う涙も、拭ってはやれないんだ。」



「嫌…嫌です…!嘘だと言って!


 ねえ、杏寿郎さん…!お願い…嘘だと言ってよ…。」



 杏寿郎さんは眉を下げて微笑んだ。









 

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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - sayaさん» sayaさん、ご感想をありがとうございます!一気読み嬉しいです〜!勿体無いお言葉まで…感謝の気持ちでいっぱいです。。ぜひ、他の作品でもお待ちしておりますね!最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。 (10月20日 19時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
saya(プロフ) - はじめまして!キュンキュンしたり、切なくなったり、ホワホワしたり、で一気読みしてしまいました。とまりませんでした。このお話と出会えてよかったです。他の作品もこれから読まさせて頂きます!! (10月19日 23時) (レス) id: 7154e48ffe (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - もにょさん» もにょさん、最後までお読みいただき、そしてコメントをしてくださり、ありがとうございます!最高な作品だなんて…幸甚の至りです!またいつでもお越しくださいね。 (5月6日 8時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
もにょ - ハンカチがびっしゃびしゃになる程泣きました。甘く切なく幸せな夢をありがとうございました。最高な作品に出会えて幸せです。長編お疲れ様でした! (5月6日 4時) (レス) @page48 id: c62f6d1e54 (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 桜月夜さん» 桜月夜さん、感想ありがとうございます!感動してくださるなんて光栄です!素敵なお言葉までありがとうございます(*˙˘˙*) (2021年11月19日 17時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2021年11月5日 19時

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