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200.心を込めたもの ページ50

「杏寿郎さん。」



 久しぶりに生家に訪れていた杏寿郎さんに声をかける。


 縁側に座って、庭を眺める彼はいつもと変わらない。


 青く揺れる木々は気高く燃える炎のようだ。



「…ん?」



「今日で二十歳ですね。」



 杏寿郎さんは眉を上げる。



「…そうか!

 この頃忙しなくてな、すっかり忘れていた!」



 優しい緑の風が葉を揺らす。



「お誕生日、おめでとうございます。」



 私はそっと風呂敷に包まれたものを渡す。




「これは?」




「私からのささやかな贈り物です。」





 杏寿郎さんは、風呂敷をそっとほどき、


 中に入っているものを取り出す。




「…ハンカチ?」



「はい。使うことも多いでしょうから。」


 杏寿郎さんは少しだけ寂しそうな顔をする。



「…そうか。この刺繍は君が?」




「はい。」



 私は自分の手元に目を落とす。




「"アヤメ"という花です。



 杏寿郎さんの誕生花なのですよ。」





「そうなのか!


 とても綺麗に縫われているな。ありがとう。」




 杏寿郎さんはおもむろに私の右手を手に取り、


 水仕事で荒れ、縫い仕事で痛めた私の手を見つめる。





「…汚い手ですから。」




「…いや、とても素敵な手だ。」



 そう言うと、杏寿郎さんは私をまっすぐと見つめる。





「それで…君はどこへ行ってしまうんだ?」



「…なぜです?」



「ハンカチ、そういうことだろう?」



 杏寿郎さんは刺繍を優しくなぞる。



「…俺が気づかないとでも?」



「…実はしばらくは刺繍工場の宿舎に

 お世話になろうと思いまして。」



「宿舎…」




「あ、でも、ちゃんと煉獄家の家事も

 行いに参りますから…」




「そうか。


 身体だけは壊さぬようにな。」









 ねぇ、杏寿郎さん。




 ハンカチを贈るのは「別れ」の意味があるから。




 でもね、ハンカチの刺繍




 杏寿郎さんの誕生花に私は想いを託しました。




 気づかれなくていい。



 あなたは知らなくてもいい。





 私が刺繍したのはね、


 
 アヤメはアヤメでも、




 "ドイツアヤメ"を描いて縫ったものなの。








 花言葉は









 "燃える思い"






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 読者の皆様へ

 
 はい…お察しの通りです。

 最終章と言いながら…すみません!!

 続編へと続きます!

 もう少しお付き合いください…!!

 

 
 

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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - 衣世さん» 苦しいですね…。書いていても辛いです泣 叫んじゃってください〜!! (2021年11月3日 19時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
衣世(プロフ) - 更新ありがとうございます!杏寿郎ーー!!切ない、苦しいですね(ToT)うあぁぁぁ(TдT)叫ばずにはいられません泣 (2021年11月3日 18時) (レス) id: 1ea4fe96cf (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - akiomiさん» はじめまして。コメント嬉しいです!ありがとうございます。溶けてしまいたいですね…笑 応援ありがとうございます!引き続きお楽しみくださいませ! (2021年11月3日 12時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
akiomi(プロフ) - 初めまして。切なくてどうしようもない気持ちになり、コメントしてしまいました!雪になって、私も溶けてしまいたい笑 続きも楽しみにしております。これからも応援しています! (2021年11月3日 11時) (レス) @page45 id: 15912deccb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - ろろろーさん» はじめまして。コメントありがとうございます!胸を締め付けるようなお話ばかりで申し訳ないです。嬉しいお言葉、ありがとうございます!更新、頑張りますね! (2021年11月3日 10時) (レス) @page45 id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2021年10月23日 12時

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