君が思い出すまで3【煉獄杏寿郎】

135.家族の時間 ページ35

「えいっ！

　やー！！

　はあ…はあ…」



「もう終わりか？

　まだまだだ！もう一歩踏み込んでかかってこい！」




　華恵さんとの一件から一月ほどの月日が流れ、


　あっという間に年を越して、大正4年の正月を過ぎた。



　私は縁側に腰をかけ、


　煉獄家の庭で鍛錬に励む兄弟の様子を見ていた。


　あれからと言うもの…

　実は杏寿郎さんとは進展がない状態。


　というのも、近頃鬼の出没が多く、

　柱である杏寿郎さんは任務に赴くことや、

　柱同士の稽古に励む時間が増えた。

　
　昼間は稽古、夜は鬼狩りと

　忙しい日々を送っていた。


　そんな忙しい時に欲張ってはいけない。



「…よし！！今日のところはこれまでだ！！

　成長しているな！千寿郎！！」


「…はあ…はあ。本当ですか！？

　忙しいのに僕の鍛錬に付き合ってくれて

　ありがとうございます。」


「うむ！久しぶりに千寿郎と手合わせができて良かった！

　汗をかいただろう？まだ冷えるからな！

　着替えて一休みするとしよう！」


　私はその様子を見て、慌てて着替えの用意を持ってくる。


「お疲れ様です。

　今、お茶を入れますね。」



「A、すまないな！」
　

「あ！そうだ！

　今日は杏寿郎さんが久しぶりに帰られたので、

　ご馳走にしましょうね。」


「ご馳走か！それは楽しみだな！！」


「今日はすき焼きにしようと思います。

　今から買い出しに行ってまいりますね！」


　私は買い物の準備をして玄関へと向かうと、

　家を出る手前で千寿郎くん声をかけられる。



「Aさん、僕も一緒に行きましょうか？」


「いえ、せっかく杏寿郎さんが帰ってこられたのですから、

　千寿郎くんはお家にいてください。

　兄弟二人でお話ししたいこともあるでしょう？」


　私が笑顔を向けると、

　千寿郎くんは照れ臭そうな顔をする。


「分かりました。気をつけて行ってきてくださいね。」


　
　千寿郎くんはきっと我慢していることが多い。

　せっかく杏寿郎さんと過ごせる時間。

　家族の時間は大切にしてほしい。





　私は杏寿郎さんの喜ぶ顔を思い浮かべながら

　夕餉の買い出しへと向かった。


　




　結構いっぱい買ってしまったなあ…。

　杏寿郎さんはたくさん食べるから…と、

　彼が帰る日は食材を大量に買ってしまう。



「ただいま戻りました。」

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