君が思い出すまで【煉獄杏寿郎】

45.正直な人 ページ45

　いつもの杏寿郎さんと違い、

　驚きのあまり反射的に後ろを振り返る。

「…！？」

「どうした？そんなに目を丸くして！」

「いや、その…」

　クスクスと杏寿郎さんは笑い出す。

「か、からかわないでくださいっ！！」

「今度は茹で蛸みたいになっているな！」

　もう！と怒っていると、

　杏寿郎さんは視線を外しながら、

　そっと近くにあった手ぬぐいを差し出す。


「隠しなさい。」


　また冷静な声で言うものだから、

　何かと思えば、背中に薬を塗りやすいように

　浴衣を崩していたまま、振り返ってしまったので、

　胸が露わになっていたのだ。


「！！！…消え去りたいです…。」


「そんなことを言うな！大丈夫だ！見ていないから！」


「まあ、立派なものではないで、

　見られたとしても別に問題はないです…」


「何を言っている！

　自分の体は大切にしない！



　それに、ちょうど良い大きさだと思うぞ！」


　ちょ、ちょうどいい！？！？


「やっぱり見たんじゃないですかー！！！」

「見ていない！！」

　絶対に嘘！目を合わせないし、汗かいているし！


「ふふっ」


「なんだ！？今度は急に笑い出して！」


「いや、杏寿郎さんは嘘がつけないのだなと思いまして。」


　この人なら信じられる。

　少し芽生えていたこの感情には蓋をしよう。

　大丈夫、まだ間に合うから。



　私はこの家族の幸せのためにできることをしよう。




　大切な人の幸せを守るために。

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