九十五話 夢を見る者 ページ16
…………夢を見た。
弟が、俺を呼ぶ声が聞こえた。
"兄ちゃん"と、必死に呼ぶ声。
寝ているのに、一体なんだと呻きたいが体が動かない。
………もう一度、聞こえた弟の声に。
そして、空髪の男の声に。
_____絶対死ぬなよ、と。
_____はっと意識を戻した。
認識するよりも早く、体を捻って跳ぶ。
………間一髪、炭治郎が横たわっていたところへ鬼の手が襲い木々を薙ぎ倒していた。
「(避けた……ッ!?まだ動けたのか!?)」
脇腹に刺さった鬼の拳に吹き飛ばされ、木の幹に勢いよくぶつかって額から血を流しても尚、炭治郎は立ち上がった。
……その、目印とする厄徐の面が壊れても。
「フゥ_____ッ」
勢いよく木にぶつかり、脳震盪を起こしそうだ。
だが、炭治郎の頭は硬い。
それも、物凄く硬い。
体験談を一つ挙げるならば、Aを気絶させる程の硬さがある。
そんな彼だからこそ、何とか立ち上がっている。
まだ、やれる。立て、走れ、生き残れ。
家族を殺した鬼を、妹を鬼にした元凶を討つために。
そして、帰る場所へと待っている先生を悲しませない為にも、生きて帰るんだ。
そう、硬く胸に誓う炭治郎に、鬼はその目を大きく見開き、本能的に直感した。
_____早く殺せと。
「くそ…………ッ!」
鬼の攻撃が増した。
正直、この数の手を斬り落とし鬼の頸まで迫るのは厳しい。
だが、やらねばならない。
悪態をつきながらも炭治郎は走った。
額から流れる血で片方の目を閉じながら、それでも得意の"嗅覚"による回避は、鬼を焦燥させるに値した。
手を交わし、斬り落として、間合いを詰める。
ただ、帰る場所へ帰るために。
そして、鬼にとっての還る場所へと、還らせるために。
「ッ!!」
地面から匂った鬼の匂いに感づき、炭治郎は上へと飛んだ。
"A"に鍛えられたその跳躍力は、折り紙付きである。
「(躱されたッ……!仕留め損ねたッ!)」
炭治郎は空中で思う。
成る程、Aは過信するなと言っていた。
それは炭治郎だけでなく、全ての人間に、そして生き物に通じる事であった。
だが、過信を信じる事もまた過信である。
炭治郎は、それを痛いほど今、知った。
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極暇人(プロフ) - いえいさん» コメントありがとうございます!天才だなんて恐れ多い……!とても嬉しいです!これからもよろしくお願いします! (2020年2月1日 6時) (レス) id: d0beec2789 (このIDを非表示/違反報告)
いえい - やっぱめちゃくちゃ面白いです!主さん天才!(^o^)更新頑張って下さい! (2020年1月31日 20時) (レス) id: 482fd09204 (このIDを非表示/違反報告)
極暇人(プロフ) - 雨鷽さん» コメントありがとうございます!応援コメントは糧になりますので、本当にありがとうございます!これからもよろしくお願いします! (2020年1月22日 18時) (レス) id: d0beec2789 (このIDを非表示/違反報告)
雨鷽 - とても面白かったです!新しく更新されていたところを毎日見てますwこれからも更新頑張ってください! (2020年1月22日 18時) (レス) id: 7a91fc9f4d (このIDを非表示/違反報告)
極暇人(プロフ) - 大木さん» コメントありがとうございます!よくよく考えればそうですね、すいません……訂正しておきます。これからも宜しくお願いします! (2020年1月17日 13時) (レス) id: d0beec2789 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:極暇人 | 作成日時:2020年1月14日 20時