よろしい、ならば退散で(笑) 【鬼滅の刃】

参拾捌 ページ38

炭治郎視点









" 兄ちゃん "



竹雄…？



" 兄ちゃん兄ちゃん！ "



……茂？



" お兄ちゃん！ "



禰豆子…、なのか？



" 兄ちゃん！ "



六太……



" お兄ちゃん〜！！ "



花子



" 炭治郎… "



母ちゃん







…どうしたんだろう
みんな凄い顔をして俺を呼んでる

俺は…何を……、
何をしていたんだ？

頭が痛い
でもなんだか心地よい
…誰だろう、誰かが俺の肩を掴んでいる

いい匂いだ…
金木犀の…甘くて優しい……匂い
でも微かに藤の花の匂いがする
あの時の子に似てる

あの子は、無事かな

あれ？……あの子って




『炭治郎は…私と違っていい人……だから私みたいな人と関わらない方がいい』

嗚呼…どうか
どうかそんな事言わないで
悲しそうに微笑むあの子は、綺麗で、

…思い出した
今俺は選別の途中で







「っは！」

目が覚めるともうそこに鬼はいなくて
手には割れたお面の入った小さな手ぬぐい
懐には藤の花の匂いがする御守り
そして頭には大きな手ぬぐいで応急処置がされた後があった

見渡しても周りには誰もいなくて
でも…きっとあの子が、

Aが来てくれたんだろう…
この手ぬぐいからはAの匂いがする
きっと鬼もAが

…悔しいな、
悔しくて悲しい

本来なら俺があの鬼を斬らないといけなかったのに、錆兎と真菰と…みんなの仇を

でも…Aが殺ってくれて良かったと思ってる自分がいる、俺は本当に自分だけの力であの鬼を斬れただろうか？…いや、俺は長男だ、きっと斬れた

ごめん錆兎 真菰
こんな形でごめん、未熟でごめん
…勝ったみたいだ
だからもう安心していいよ

殺された他の子供たちもきっと
帰るという約束通り帰ったんだよな

魂だけになろうと
大好きな鱗滝さんの所へ、狭霧山へ
もしAがいなくて
あのまま俺も死んでいたら

魂だけでも帰ったはずだ
禰豆子と鱗滝さんのいる所に









……それから七日後 早朝
俺は最終選別の説明をされた場所まで戻って来た
昨日の夜にはもう山にあった禍々しい気配や殺気帯びた気配は何もなかった

よたよたと足を動かし
場所に着くと既に四人立っていた

その中にAは…、居た！
良かった…無事だったんだ、やっぱり、

疲れを忘れて俺はAに飛びついた
着物と着物が触れ伝わる心音がトクトクと心地よい


はっとした
俺は嫁入り前の女の子になんて事をっ！？
でも本人はあんまり気にしてないようで少し胸の奥が痛くなった

なんだ この感情は…、？

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