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それでも。
それでも残った願望が、耐えきれずぽつりとこぼれおちた。
「私は……きっとみんなと、サッカーをしてみたかった」
雷門サッカー部。
彼らのサッカーを見て思う。なんてあたたかくて、まっすぐで、底抜けに明るいサッカーなんだろうって。
私は児童期を思い出す。私の原点を遡る。私が好きになったサッカーは、きっとこんなサッカーだった。お日様園のみんなとただ夢中でボールを蹴り合って、体を動かして、底抜けに笑って、幸せで、そう、しあわせで…
「神崎、お前……」
「え…………」
気付いたら、涙が一筋流れ落ちていた。涙は頬を通り抜け、地面にぽたぽたと染みを作っていた。
「え、あ、なんでだろ……涙が、止まらないや……」
鬼道は私を見つめている。誤魔化しはできなかった。
それどころか、涙はとどまることがなく滔々と流れ続けた。頭の中で記憶が流れては消えていった。
楽しかった昔のサッカー。エイリア石でおかしくなってしまったお父様、私にひれ伏す家族たち。逃げる私と瞳子姉、フィディオと時間を忘れて走り回った夕暮れ、日本に帰ってきてから起こる幸せと恐怖が募る日々。
「お前は、寂しかったんだな」
彼の口からぽつりとこぼれたその言葉が、心の壁が崩れる合図だった。
私は成すすべもなく泣き崩れた。鬼道が私を支え、そっと自分の肩へと寄せた。
独りぼっちのワンルームは絶えず空虚な静けさで、私の心を絞めた。独りぼっちのサッカーは虚しさを助長して、心に大きな風穴を空けた。きっともう、色々なことが限界へと近づいていた。
地獄の門はすでに開かれてしまった。私は予感している。もうすぐ魔の手が来ることを。この2年来て欲しくて、でもどうしても来て欲しくなかった終わりが始まることを。
「ごめん、鬼道……少しだけ、少しだけだから……」
私は鬼道の肩を借りて、ただ、泣いた。これまで降り積もった沢山の感情を絞り出すように。
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碧(プロフ) - わたぐもさん» わたぐもさま ありがとうございます。長らくお待たせいたしました。今後ともお楽しみいただければ幸いです。 (2022年7月2日 22時) (レス) id: 555a0dca31 (このIDを非表示/違反報告)
わたぐも(プロフ) - とっても好きな作品なので、再開凄く嬉しいです…! (2022年7月1日 23時) (レス) @page43 id: 5d152484ae (このIDを非表示/違反報告)
鱗川 - ゆっくりで良いので頑張ってください! (2022年3月25日 1時) (レス) @page40 id: d49fa68ddd (このIDを非表示/違反報告)
moeka(プロフ) - 最近更新がなくて寂しいです。更新してくれると嬉しいです。待ってます。 (2020年2月27日 14時) (レス) id: d61ed9781e (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 更新再開するんですね...!ずっと待っていました!この作品の夢主ちゃん可愛いし、性格も大好きで憧れなんです。これからの更新楽しみにしています! (2019年3月4日 5時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Aoi | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aika398/
作成日時:2017年11月8日 23時