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守が鬼道の元へ駆けて行ったことを知らされた。ある日の夕方のことだった。
それを聞いて私は思う。彼なら、鬼道の悔恨に向き合うことが出来るのだろうと。そしてそれは恐らく正しい。
守にはその力がある。鬼道の心を開くための、何かが。私には無い何かが。
「お前は行かないのか?」
私の瞳を真っ直ぐ見つめて、豪炎寺は問いかけてきた。視線に耐えきれず俯いて、ただ小さく首を振った。
私にはそんな力は無かった。鬼道を慰めるどころか傷付けることしか出来なかったのに、今更行ったところで何が出来る?
鬼道の傷を抉ることしか出来ない自分に、追い掛ける資格などない。
「今の私が慰めようとしたところで、鬼道の心には響かない」
「……なんで、そう思うんだ?」
「言われたもの。……『お前なら一人でも勝てたんだろう』って。……私も、そう思うもの」
鬼道を奮い立たせるために必要な強さを、私は生憎持っていなかった。
私が必要とする強さは、私の持っている強さとは別の何かだったのだ。
仕方のないことだ?
そうだろう。だって私が何をしたって実力差が狭まるわけじゃないのだから。
お前が気負う必要はない?
そうだろう。だって実力の差を埋めるには、彼らが追いついてくれるのを待つしか出来ないのだから!
だがそれを嘆いて何が起こるわけでもない。結局のところ私にはどうすることも出来ない問題……だから、声の掛けようなどあるはずもなかったのだ。
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碧(プロフ) - わたぐもさん» わたぐもさま ありがとうございます。長らくお待たせいたしました。今後ともお楽しみいただければ幸いです。 (2022年7月2日 22時) (レス) id: 555a0dca31 (このIDを非表示/違反報告)
わたぐも(プロフ) - とっても好きな作品なので、再開凄く嬉しいです…! (2022年7月1日 23時) (レス) @page43 id: 5d152484ae (このIDを非表示/違反報告)
鱗川 - ゆっくりで良いので頑張ってください! (2022年3月25日 1時) (レス) @page40 id: d49fa68ddd (このIDを非表示/違反報告)
moeka(プロフ) - 最近更新がなくて寂しいです。更新してくれると嬉しいです。待ってます。 (2020年2月27日 14時) (レス) id: d61ed9781e (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 更新再開するんですね...!ずっと待っていました!この作品の夢主ちゃん可愛いし、性格も大好きで憧れなんです。これからの更新楽しみにしています! (2019年3月4日 5時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Aoi | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aika398/
作成日時:2017年11月8日 23時