第60話 ページ12
斑鳩士門side
『ねえ、士門』
「何だ?」
焔魔堂と化野と話していた彼方が俺に話しかけてきた。
『ろく、ボコボコにしたの.....。清弦さんへのことでの八つ当たりも入ってたよね.....?』
ちょいちょいと手招きし立ち上がった彼方に着いていく形で俺も立ち上がっり、昔と変わらない赤い瞳で聞いてきた。
それが本当だと信じるような瞳。
彼方の言葉にドキリとした。
当たっているからだ。
焔魔堂にそういう思いを抱いていたのは本当だ。
それを見ていなかったこいつにバレるなんて思わなかった。
『あ、別に怒ってる訳じゃないよ。.......ろくろとも本音で戦ったんだろうし......あの子、そういう事をしっかりと受け止められる子だからね......!心配はしてない』
嬉しそうに話す彼方は、この数年で焔魔堂の事を大切にしている事がわかる。
焔魔堂と同じ赤い目。
右目は義眼と清弦さんから聞いた。
それも気にせず元気に暮らす彼方。
その事を聞いた俺達は当時かなり心配したんだがな。昔からこいつのこういうは変わらない。
人の本質を感じとり、無自覚に救う。
こいつの当たり前は誰かにとっての当たり前じゃない。
それに救われた奴を一人知ってる。
「お前のつけているリボン....」
『ん?.....あ、これ......?』
俺の言葉に彼方は頭に着けていたリボンを触る。
大切そうに触る彼方に少しの希望をみた。
『誰からもらったのかは、覚えてないんだけど......』
次の言葉でその希望は消えた。
彼方は、それを誰から貰ったのか覚えていないのだから。
『........私の大切な物なんだ』
「!!.......そうか」
記憶がなくても、覚えていなくても、そのリボンに何かを感じているのだろう。大切そうに、愛おしそうに見る彼方はあの時と同じ.....、俺に嬉しそうに話してくれていた時と同じ目をしている。
今よりも前の記憶。
幼い頃の彼方が嬉しそうに伝えてくれたこと。
彼方のリボンは、アイツが贈った物。
アイツの光は、今ここにいる。
当たり前を当然のように送って、笑わせて。
「ボソッ)昔と変わらんな.....」
『?何か言った?』
不思議そうに見る彼方に「何でもない」と言って、気にしないようにいう。
俺の大切な幼馴染は、昔も今も変わらない。
それが堪らなく嬉しい。
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夏菜沙(プロフ) - ありがとうございます!嬉しいです!! (2021年7月31日 13時) (レス) id: 6b5f9c4200 (このIDを非表示/違反報告)
346 - なんで評価低いのかわからない!面白いです!!これからも頑張ってください! (2021年7月30日 0時) (レス) id: b132005490 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏菜沙 | 作成日時:2021年7月22日 16時