第19話 ページ21
不満が残る二人に土御門さんは御試しで暮らしてみることを進めている。それを渋々了承する事になった二人。まぁ、ほぼ強制だけど。
『二人とも頑張って！御飯とかお菓子とか作りにくるから』
「姉ちゃん.....」
「彼方さん」
『紅、ろくのことよろしくね！』
「......はい.....」
「いや、「はい」じゃねえよ！！！姉ちゃんも頼むなよ！！」
『いや、だって心配だし........うん。でも、二人ともお互いのことがもっとわかるようになって楽しい生活になると思うよ？(多分)頑張れ！！』
二人の返事も聞かずにいい逃げのようにその場を去った。
あの二人なら大丈夫でしょ！
──────────
『...........あの、何ですか？.........土御門さん』
「ふっふっふ、ちょっと君と話がしたくてね？」
ろく達と話していた時のような顔と声で私に話しかけてくる土御門さん。この人、何を考えているかわからなくて怖いんだけど。
『話って何ですか？』
「君は昔の記憶がないんだよね？」
『そうですけど.....それが何か？』
「彼方君は、自分が何者であるか知りたいと思わないのかい？」
自分が何者であるか。
そんなの、
『知りたいと思いますよ.....だだ....』
「ただ？」
『知りたくないと思ってしまう自分もいます。........知ってしまったら今の自分に戻れないんじゃないかと思う自分がいるから.......』
変わってしまう自分が怖い。
『でも、変わらない人なんていないですから結局は変わるんですけどね』
そうきっと、思い出したら元には戻れない。
「そうかい。.......実はね、君の名前がろくろ君達と同じ日に僕に知らされたんだ」
『！』
私の名前が？
.........え、何かやったっけ！？
陰陽師の偉い人に伝わるようなことしたっけ！？
内心パニクってる私。
「ろくろ君達と同じで僕には君にも何かあると思っているよ」
『そう、ですか.....』
はぁ、私に何があるって言うんですかね？
記憶を失う前の自分を想像して、そっとため息をついた。
私の運命も彼らと廻り始めるのかな.......？
「......君が、______の光である事は変わらないけれど......ね」
その呟きは私には聞こえない。
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作者名：夏菜沙 | 作成日時：2021年7月12日 20時
