第13話 ページ15
いつ帰ってくるんだろう?夕方ぐらいかな?ただ、待ってるだけは暇なのでお菓子を作ろうと思う。前回は、カップケーキを作った。本屋さんで買ってきたレシピ本を見ながら作ってみて、ろくろ達に好評。今回は、何にしようとレシピ本を棚から出してきて、う〜ん....と悩みながら椅子に座っている。
『........パウンドケーキでいこう!』
レシピ本に付箋を貼って閉じないように印をつけた。
早速、必要な材料を探しテーブルに置いていく。
『!?』
──どうかな、パウンドケーキを作ってみたんだけど、美味しい?──
──うん。上手いな!──
──前回より、成長したんじゃねぇか?前は真っ黒焦げだっただろ──
──うっ......お恥ずかしい.....──
『.......』
今よりも少し小さい私と知ってるようで知らない男の子が二人頭の中に現れた。楽しそうに嬉しそうに話す私。ああ、.....これは私の記憶。記憶がなくなる前の昔の私の記憶。今まで、こんなの一度もみたことがなかった。表情がはっきりとわかるのは私だけ。他の二人はモヤがかかっていて誰であるかもわからない。ただ、懐かしいという感情が自分の中に生まれるだけ。
『(今の光景は私の過去の記憶.....)』
今から五年前。
怪我をしている私を発見した陰陽師である「天若清弦」さんが私をここに連れて来てくれた。亮悟さんやじっさま、ろくが見ず知らずの私の事を心配してくれて、優しく話かけてくれた。怪我のショックかはたまた精神的なストレスのせいか、私は今までの記憶を失っていた。
奇跡的なのは、前世の記憶はそのままで今までの十一年間の記憶がきれいにごっそりとなくなっていた。なんて、都合のいい展開。
当初は、目覚めたら二次元の世界.....、双星の陰陽師の世界の若い頃のキャラが目の前にいて焦った。でも、どんなに思い出そうともキャラの名前だけは思い出せても、話の内容が思い出せなかった。
困惑しながらも、徐々になれていき、自分の状況を把握しながら傷を治す日々。清弦さんは、記憶をなくす前の私の事を知っていたらしくポンポンと私の事を決めていった。小さい頃から陰陽師として活動していたろくろが、よく陰陽師の事を嬉しそうに楽しそうに話してくれた。
『(それで私も楽しくなったっけなぁ.....)』
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作者名:夏菜沙 | 作成日時:2021年7月12日 20時