排球部エースは転生少女《６》 (ページ20)

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◇涙の跡ページ20

榊千歳side

『ｽｩ......』

寝息をたてて眠る湖羽。閉会式も終わり、学校に帰るためバスに乗った私達。疲れと負けたことでの精神的なあれで今日はダウンな湖羽や他のメンバーは眠っている。サポートを全力でしてくれたレギュラーメンバー以外もバスの揺れで眠くなり、ダウン。起きてるのは、湖羽以外の私達三年生だけ。

「やっぱり、今日一番動いて、跳んだ湖羽は当然のようにダウンしたね」

「それに泣いたんでしょ？....泣きつかれもあるね」

隣の席に座る残りの三年生二人が通路側に寝る湖羽の顔を覗きながら、言った。湖羽の顔にはうっすらと涙の跡。

「あんまり泣かないのにね。.....あんたも気づかれてないと思ってるのか、涙の跡あるよ」

「......そこは見ないふりしてよ、桜良サン」

「今日は無理かな～.....」

いつもなら、見ないふりしてくれる桜良。

最後の試合。ボールを取れなかったことが精神的にきているのだろう。悔しくて、悔しくて、それを隠そうとして言いたい事を全部言う桜良さんになってる(大会あとはこうなる市ノ瀬桜良)。

「最優秀選手賞、とってたけど微妙だろうね」

「そうだね」

試合には負けたけど、今大会の最優秀選手賞、女子の方は湖羽がとった。

「悔いが残る試合だった.....」

「そこで寝てる人の方もものスッゴく悔いが残る試合だったと思うけど」

「.....皆、悔いしか残らなかったでしょ」

それは勿論私も。最後の試合、完璧なトスを湖羽に上げた。湖羽の方も完璧だった。助走のタイミング、ジャンプの高さ、全部が完璧だと思った。それは本人も私達も。でも、止められた。三枚ブロック、守上ちゃんに止められたのだ。

「(.....悔しい....)」

スパイクを止められたのも、悔しかったが何より.....。

湖羽を翔ばせてあげれなかったのが、悔しい。
私のセットアップで湖羽の前に立ち塞がる壁を″あの景色″を見せてあげるために道を切り開いてあげたかった。

それが私のしたいこと、役目。
それが出来ないことが一番悔しい。

この隣のエースをもっと翔ばせてあげれるセッターになりたいと強く思う。

もっと翔ぶ光景を一番みたいと思うんだよ。
誰よりも、湖羽よりも。

あの後ろ姿を横顔を見たいと望んでいる。

「次は勝つ」

「うん」

「わかってる」

　