其の拾 探偵の男 ページ11
午前10時、ヨコハマ。
一郎達三兄弟は今日も今日とて捜索に勤しむ。
だがやはり成果は出ず、あっという間に2時間が過ぎていた。
昨日と同じ喫茶処で小休憩をする。
「俺の
「僕もこれと言った情報はまだ……」
肩を落とす弟達を慰める様に一郎は声をかける。
「いいんだ、そう簡単に見つかるとは思っていなかったし。ありがとな」
とはいえ、昨日と今日でまわれる所はまわりきった筈だ。あとは何処を探すか。
(やっぱ
三人で考え込んでいると、カウンター席に座っていた男に声を掛けられた。
「随分と困っている様だけど、どうしたんだい？」
「ああ、いえ……」
なんでもないですと言う前に、男が「嗚呼！」と手を叩く。
「若しや君達が敦君の云っていた三兄弟だね？いやぁ話は彼から訊いているよ。何でも生き別れた姉を探しているとか」
「ああ、はい……」
饒舌に話す男に一郎は当惑する。三郎など眉間にこれでもかと皺を寄せ不快感を表しているが、こちらの様子を顧みずに男は話を続ける。
「なぁ、敦君って誰だ？」
そんな中、純粋に疑問に思ったのであろう。二郎たが男に問いかけた。
「嗚呼済まないね。説明不足だった。敦君と云うのは、昨日此処で項垂れていた君達の話を聞いた白髪の少年だよ。私は彼の先輩なんだ」
「先輩ってことは、アンタも武装探偵社の人なのか？」
二郎の返答を聞き、男は笑みを深くする。
「そうだとも。所で、君達如何やら未だ手掛かりを得られていない様だけど」
「そうなんだよ。アンタなんか知ってるか？ていうか、武装探偵社って人探しも依頼できるのか？」
男は笑みを崩さず言った。
「勿論だとも。何せ“武装”は付けど“探偵社”だからね」
「っ、あの！それなら、人探しを手伝って貰いたいんですけど！」
つい前のめりになって一郎が言う。其の慌てようを宥める様な声で男が言った。
「では、場所を変えようか」
同じ建物をもう一階上がって、随分と年季のあるエレベーターに乗る。探偵社に着くまでに、男は自己紹介をした。
男は太宰治と名乗った。武装探偵社社員で、昨日の少年の先輩に当たり、趣味は…まあ、とんでもない趣味である。三人は思わず顔を顰めた。
それでも彼が今こうして生きていると言うことは、軒並み失敗しているのだろう。そうこう話していると、あっという間に武装探偵社にたどり着いた。
其の拾壱 女の情報、姉の名前 前編→←其の玖 一般人と異能力者
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作者名：耐熱ガラス | 作成日時：2020年3月15日 17時
