19 水仕掛け ページ24
五色の花火の光を受け
高く低く吹き上がる水の飛沫が眩しくきらめく。
「‥きれ･･ぇ‥。」
みやびの感じ入った声に
二宮は
(あぁ、連れて来て良かった。)
にんまり
会心の笑みをもらした。
五色の花火が燃え尽きると
きらめく水の仕掛けもピタリと止まった。
若衆髷の娘と天女姿の女たちが綺麗に並んで
見物人に
そろって頭を下げると
夢のような舞台に見とれていた人々は
わぁっと一斉に歓声を上げ
割れんばかりの拍手喝さいを送った。
もちろんみやびも
さっきまでしっかり握っていた二宮の手を離し
手のひらが真っ赤になるほど拍手を送った。
水仕掛けが終わると
何重にも重なっていた人垣がほぐれ
人々は
思い思いの方向へと歩みだした。
立ち止まったら後ろから突き上げをくらいそうなので
人の動きを見ながら
ぶつからないように
ひらり、ひらりと身をかわしながら歩いて行く。
とにかく
前も後ろも、人、人、人の波。
自分の足下も見られないくらい人混みだ。
こんな所ではぐれたら
なかなか探し当てるのは骨だぞ‥と独り言ち
二宮はみやびの手をきつく握った。
あっちこっちで
賑やかなお囃子の音色がして
わぁっという歓声や
大きな拍手が巻き起こっている。
「みやび？次は何を見る？あっちでは独楽回しやってるよ？」
と
自分の腕にしがみついてるみやびを振り返った時
二宮は
ハッと目を見張った。
さっきまで楽しそうにはしゃいでいたみやびが
今は
真っ青になっていたから。
「み、みやび？大丈夫か？」
二宮がみやびの肩を抱くと
みやびは
くったりと二宮の胸にもたれかかってきた。
「‥だい、じょ･･ぶ。」
とみやびは言うが
その声は今にも消え入りそうだ。
目も開けていられないようで
ぎゅうっと目をつぶり
二宮の胸元に顔をうずめるようにしてしがみついている。
「人あたりしたかな･･。」
小さくつぶやいた二宮が
みやびの肩を抱いてゆっくり道の端へと移動した。
「みやび？あっちの茶屋まで歩けるかい？」
二宮が向こうにチラッと見える茶屋を指さし尋ねたが
みやびは
顔を上げるのもしんどいのか、その茶屋を見ることもせず
うつむいたまま
力なくふるふると首を振った。
これは
歩くどころか立っているのも限界のよう。
今にも膝から崩れ落ちそうだ。
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作者名：はっしー
作成日時：2018年5月16日 0時
