16 心配性 ページ21
「みやび？
迷ってるんなら
二つとも、お父様に買ってもらえばいいよ。」
と事も無げに言う二宮に
智三郎は
「おいおい、金を出すのは俺なのかい？
お前の方が金もってるだろうに。」
文句を言いながらも眉を八の字に下げて笑った。
その智三郎にみやびは
ふるふると首を振ってから
「ううん、もう反物はいいの。
だって、先生が迎えに来てくれたんだもの！」
にこぱっと眩しい笑顔を咲かせた。
「は？迎えにって、どっか行くのかい？」
きょとんとする智三郎に
みやびが
「もうお父様ったら！
今日は先生と
浅草寺の奥山に大道芸を見に行くって
前から言ってたでしょう？」
と
むにゅっと唇を引き締めて
軽く睨んで見せるが、全〜然怖くない♪
「あ･･、あぁ、そ、そんなこと、言ってたっけっか‥？」
ってはっきりしない智三郎を見て
二宮は
あはははっと楽しそうに声を上げて笑った。
そして
濡れ縁から、よっこらせっと立ち上がり
「ちょいと早いけど、迎えに来ましたよ。
表に駕籠を待たせてあります。
さぁ、みやび、行きましょう。」
裏木戸のほうを
細い顎先でしゃくって見せた。
久しぶりのお出かけが嬉しくてたまらないのだろう
大きな黒い瞳をキラキラ輝かせ
「はい♪」
と元気いっぱい大きな声で返事をするみやび。
「でも先生、ちょっと待ってて。
新しい草履をおろすから。」
と
パタパタ座敷から出ていくが
その後ろを智三郎が
「み、みやび？気をつけて行くんだよ？」
「カズから離れないようにね！」
「知らない人についてっちゃダメだぞ！」
くどくど言いながら追いかけていく。
その様子を見ながら
二宮は
ふふ･･っと唇の端っこで笑い
少し呆れ気味に呟いた。
「やれやれ
ちょいと出かけるだけなのに
心配性なお父様ですねぇ‥。」
さて‥
「心配性」と
二宮は智三郎のことを笑っていますが
実は
智三郎の心配性は
的外れなものじゃなかったんです。
だって
この外出で
みやびは
ちょっとした事件に巻き込まれてしまうのですから。
どんな事件か、だって？
んふふ〜♪
それは
また次のお話で詳しくさせていただきましょう。
それまで
しばらくお待ちくださいませ。
次回更新をお楽しみに〜♪
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作者名：はっしー
作成日時：2018年5月16日 0時
