てつや ページ34
『よしよし』
ぐずりと鳴る鼻を腕でこすり、Aさんの胸から顔を離すと、びしょ濡れになったAさんの制服のブレザーに目がいった。僕が汚したんだ。
「すみません・・・涙で汚してしまって」
『だいじょうぶ。ゆうひくんのよだれよりは綺麗だよ』
それは・・・そう言われてしまうと何も言えない。
『どうする?今日ぶかつは?』
「実は・・・部活動停止中なんです」
不仲による部活動停止。言う度それは僕の胸に深く刺さる。
『んーんー!それはつごうがいいね』
「えっ」
立ち上がり、スカートについた埃を払ってAさんの手は僕の手を優しく包んだ。
『あまいもの、たべにいこーよ。泣いたらあまいもの、たべたいでしょ』
今はそれがなんだかとても嬉しかった。
────
「あの、僕・・・あまり洒落たお店とか経験がなくて・・・」
ゆっくり歩き出すAさんに僕は言った。Aさんは僕を見てにっこり笑った。
『だいじょうぶ。わたしのお気に入りのとこだから、てつやも気にいってくれるよ』
細い裏路地を談笑しながら進むと、その店はレトロな雰囲気をまとってそこに佇んでいた
「“すみや堂”・・・」
ドアのない開放的な店には色とりどりのスーパーボールや駄菓子が隙間なく並べられている。
『おばさん』
「あぁら、れたすちゃん。隣はおともだちかしらん?ゆっくり遊んでいって」
「ええ、どうも。」
ありがとう、そうAは呟いて店の中に足を踏み入れる。初めて来るはずなのに懐かしいこの匂い。10円でお菓子が買える店がまだこんな所にあるのが不思議になった。
「あれじぃさん!れたすちゃんきましたよ」
大きな声でお婆さんがいえば、丸い顔のお爺さんがひょっこりと顔を覗かせた。
「おおぉAちゃん。最近どうだい?あの馬鹿千秋が迷惑かけてないかい?」
『うん。いつも助けてもらってるよ、いいお孫さんだよ』
千秋が・・・孫?橙野千秋さんの祖父母なのでしょうか?
『てつや、この人たちはゆうひくんのお爺さんお婆さん。だがし屋さんなの』
「こりゃどーも!千秋がお世話になっております」「落ち着いた子ねぇ。千秋とは正反対だわぁ」
「いえ、こちらこそ。千秋さんは明るくて人気者ですよ」
軽く挨拶を交わして僕は荻原さんの隣に並んで一通りお菓子を見始めた
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つゆロロ(プロフ) - あひるさん» ありがとうございます。荻原ちゃんの楽器についてですが、お好きなものを想像してください(笑)私的にはバリトンやユーフォなどの低音楽器をイメージしておりますが。初コメントうれしいです!これからもどうぞ、見守ってくだされば幸いです((*_ _) (2017年11月20日 19時) (レス) id: 3fbfa2c7b2 (このIDを非表示/違反報告)
あひる(プロフ) - 面白いです!更新頑張ってください!因みに夢主ちゃんの楽器はなんですか? (2017年11月20日 1時) (レス) id: a0a203a011 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つゆロロ | 作成日時:2017年11月7日 0時