BLACK TrackONE【4】 (ページ39)

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Side PINK

北斗にノートを借りて写していると、

「おはよーっ、あ、俺にもノート見せて！」

「今日、めっちゃあちぃな！？」

「うるせぇよ、慎太郎、笑」

樹と慎太郎、高地がやってきた。

コイツらはスポーツ部だから朝練組。
朝からボディシートで汗を拭きながら教室に入ってきた。

「…北斗、」

隣の席で本を読んでいた北斗の肩をトントンすると、「あ、おあよぉ」と3人に挨拶をした。

「ノート、見てもいい？」

樹はゆっくりと喋って、北斗は苦笑いで頷いた。
樹の声は低いからか、他より聞き取りにくいみたい。
北斗は申し訳なさそうなんだけど、樹は何ら気にしてなくて、より短い文で話しかけている印象。

3人は高校に入ってから仲良くなったんだけど、北斗のことも理解してくれて何かとサポートしてくれるんだよね。

と、言うのも、北斗は一番前の席で固定なんだけど、それでも聞き取れずに、授業の内容が分からなくなることがある。
先生が黒板に向かって話してるときは唇が読み取れないし、北斗がノートを取っているときは勿論、先生が喋っても分からないし。

だから、黒板の板書だけじゃなくて、先生が話す重要な事柄は“ノートテイカー”として、代わりに書き留めてやる。

まぁ、それは俺やジェシーが基本やってるんだけど、席が近くないと、その場その場でのサポートが必要なとき……例えば教科書のページ数を指示されたときとかは難しくて。

運良く優しい慎太郎が入学して最初の北斗の隣の席だったから、色々とお願いして、快く受け入れてくれて、慎太郎と中学から仲の良かった他の二人とも仲良くなれたってわけ。

なんだけど。
席替えをして慎太郎が隣じゃなくなって。
新しく北斗の近くの席になった奴らは全くもって協力してくれなくて。

「いあ、どおのぺーじ？
(今、どこのページ？)」

小声で後ろの人に話しかける北斗。
「ん？」と数回聞き返し、「あぁ」と。
聞き取ってもらえたことに安心した表情の北斗。

だけど。
当たり前だけど、授業中だから、後ろの子は小声で答えた。
しかも下を向いたまま。
肘もついているし、ページ数は見えないだろう。

「っ、ぁぃがと」

お礼は言っているものの、顔つきからして聞き取れなかったんだろう。

「……(48ページだよ！)」

戸惑った顔で見てきた北斗に、指でページ数を教えた。

北斗の3席後ろの隣の列。
この距離がもどかしい。

北斗の背中は小さく見えた。