BLACK TrackONE【4】 (ページ35)

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Track 47【ミソフォニア】ページ35

Side GREEN

「……これに北斗は苦しんでるんだけどねぇ。」

早起きして一人で朝食は寂しいもので、
TVを付けていたら、『ASMR』の話題だった。
これに癒やされる人がいる中で、時折、なんでうちの子だけ…と思ってしまうこともある。
ミソフォニアは認知度も低いし、世知辛い世の中だ。

「ごちそうさまでした。」

一人で手を合わせて、食器を片付ける。
洗わずに水につけるだけつけて、洗面台へ。

「北斗、おはよう。もう終わったよ～」

これが俺達のルーティン。
北斗は先に着替えやら顔を洗うなりして、
俺が食事を終える頃にリビングにやってくる。

北斗は、他人の咀嚼音が苦手だから。
いや、苦手というレベルではなく、言うならば、怒鳴るほどのやつ。

我が家の食事は一人ずつ。
と言っても、俺と北斗の二人だけなんだけど。

他にも特定の音が北斗を苦しめている。
掃除機の爆音は平気なのに、時計の秒針はだめ。
人混みで人がワイワイやってるのはだめだけど、車が近くを通っても平気。

まぁ小さい頃は意思表示ができないで泣いたり怒ったりしてるばかりで、何がだめで何が大丈夫なのか検討もつかなくて大変だった。
それは北斗自身もそうで、あれはだめだ、って認識するまで時間がかかった。

今は、北斗が小学校に入って、北斗も俺もかなり対応できるようになってきたけど、普通の小学校に通う北斗は、他の人と関わる時間も長くなっている分、音に苛立つ時間も増えたみたい。

小学1年生の周りの子にこれを理解しろって言うのも酷だと思うし、入学して少し経ったけど、北斗は最近元気がない。

「ねぇ、パパ、髪の毛やってぇ」

台に乗った北斗がピョンと跳ねた髪を濡らしている。それでもまだピョンピョン。

「今日もまた芸術的だね、笑」

笑いながらドライヤーをかけてあげる。

というのも、嫌な音から逃げるために北斗は常に耳栓をするようになって、それを隠すために髪は長め。
北斗が髪を耳にかけると、我が子ながらすっごいイケメンなんだけどね、
たまに家だけで見せてくれる姿を思い出して、思わずクスクス笑ってしまった。

「なんで笑ってるの？」

「んー？北斗が大好きだからだよ」

少し大きめの声で話す。
なんてったって、ドライヤーに耳栓だから。

「なぁに～？きこえなーい！」

不機嫌な顔もまた可愛い。
ドライヤーを止め、耳栓がきちんと隠れるように整えてやると、ヒョイッ！と台から飛び降りる。

いつも通りの暖かい朝。