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Side BLACK
翌日の朝。
苦笑いの兄ちゃんは今日、テストの日らしくて2限からなんだって。
「…心配だから、俺も一緒に出るよ」
なんて強引についてきた。
荷物をチャリの荷台に置かせてもらって、ゆっくり歩いていくと少し気分の悪さも軽減して結構助かったけど。
「…京本先生と、お話できるといいね。
行ってらっしゃい」
背中を押されて保健室に向かうと、
もう京本先生は来ていた。
「おはよう、松村くん！
今日は早く来られたんだね。良かった」
「おはよう、ございます。」
漫画だったら『キラキラ』と周囲に書かれていそうなほど眩しい笑顔に圧倒されながら、荷物を置く。
「……あの、その…こないだは、ごめんなさい」
「んー？なんのこと？」
「えっ？…ぁ、その、…先生の白衣汚しちゃって。ベッドとか制服も…綺麗にしてくれて…」
段々声が小さくなるのが自分でもわかる。
顔をまともに見れない。
「あー！良いのいいの。
それにあのとき、北斗くん我慢してしんどかったでしょ。
俺の方こそごめん。確認すればよかった。
体調不良って誰も悪くないから。」
「…っ、でももっと早く言わなかったのは俺で…」
「んー、じゃあ今後は何でも言って？俺に甘えて良いからね！それが俺の仕事だから」
……不思議な声だなと思った。
中性的で華奢な見た目よりも力強くて優しい声。
「でも、そんなに割り切れるものでもないですよね…
あんなに汚いとこ見せて、させちゃって…」
「…でも俺の可愛い生徒だからね。全然平気。
まぁ苦しんでるところを見るのは辛いけど、松村くんのことを汚いとか、そんなふうに思ったりしないよ」
心に刺さった棘が、まるで元々なかったみたいに無くなっていく感覚がした。
兄ちゃんは、棘を共に一本一本取ってくれるし、
樹先生は、暖かさで溶かしてくれるし、
母さんは、棘を一緒に受け止めて、半分こにしてくれる。
だけど、京本先生はそのどれとも違うみたい。
「…これからは俺が保健室の先生だからさ。
せめてこの空間にいる間は、何でも相談してよ」
「…ありがとう、ございます」
多分仲良くなるにはもう少し時間がかかるけど、
前みたいな気まずさはもう無くなっていた。
「……ベッドで横になる？少し顔色悪いから」
緊張が溶けて気が緩んだか、確かにもう少し横になりたい。
俺はコクリと頷いてベッドまで支えてもらった。
背中を擦ってくれる暖かさはあの日以上で、
とても心地よかった。
Fin
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作者名：あーちゃん
| 作成日時：2020年9月3日 21時
