BLACK TrackONE【4】 (ページ28)

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Side GREEN

「例えば、領収書は日付がどれだってのを○で示してさえやれば、
QRコード決済の引き落とし履歴を見たりして、
いつ、どこで、なんのために、いくら使ったか分かるようになった。
フォーマットが決まってるものは分かりやすいらしい。
あとはそれをコピペして、予め計算式の入ったExcelに入力してくれて、気付けば1ヶ月の経費が出てました！
めでたしめでたし。となるわけ」

樹さんは俺を気遣ってか、明るくゆっくりとした口調で話してくれた。

「コーヒーメーカーもボタン多くて、文字が分からない北斗には難しかったみたい。
最初はハサミ一つ片付けるのも…
だけど今は、色んな工夫で北斗が戸惑うことは殆ど無くなってるから、仕事に支障はないと思う。

…もしかしたら、慎太郎には手間をかける部分があるかも知れないけど、これからよろしくね」

コクリ、と頷くことしかできない俺。

「このことは俺から話してほしいって言われてることだったし、慎太郎にも少しずつでいいから理解してほしい」

樹さんはその後も色んなことを教えてくれた。

北斗さんが資料の管理をしているから、
ファイル名の付け方、書き方のフォーマットも細かく決まりがある。

だけど、そのマニュアル通りにすれば、北斗さんも戸惑うことなく受け取ってくれて、ファイリングしたり、サーバーにアップロードしてくれる。

そのおかげで過去の資料は完璧に保存されていて、
新人の俺には、顧客情報なんかもすぐに確認することができたし、提案書の参考資料も探しやすかった。

「シンタロー、
この提案書PPT、凄く分かりやすいよ。」

ある時、クライアントに向けた資料作りをして、
北斗さんにそう言われた。

「読んでくれたんですか！
ありがとうございます！やったぁ…
北斗さんが管理してくれてた昔の資料参考にしただけなんですけどね、笑」

北斗さんは戸惑ったようにクスクス笑う。

「…俺は字が読めないから、読んだとは言えないんだけど…
それでもこの絵とアニメーション凄く分かりやすかったから、ちゃんと伝わったよ。

…プレゼン練習してみる？
俺でも理解できるような説明ができれば
きっとクライアントはもっと納得すると思う」

そんなことを言われたのは初めてで顔が緩む。

「はいっ！俺、喋ることだけは得意なので！」

人には向き、不向きがある。
だけど、力を合わせれば補い合うことができる。

俺は尊敬する先輩に「お願いします！」と頭を下げた。

Fin