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Side BLACK
酸欠のためか頭痛が激しく、くらくらする感覚は残ったまま、俺はいつの間にか寝室のふかふかベッドに戻っていた。
お華のお稽古もするはずだったのに…
その後は、ジェシーが作ってくれるお菓子を一緒に食べるはずだった。
ジェシーはうちのコックであり、樹も料理を習っていた。
樹は凄い。
お掃除も得意だし、アイロン掛けも包丁も上手。
俺は、ジェシーと一緒に調理台に立つ樹を見るのがとても好きだった。
きっと今頃夕飯を作ってるだろう。
そう思って、俺はパジャマの上にタオルケットをポンチョのように羽織って、寝室を出た。
「今日はpuddingにしようか、Ahaha
……樹さんまだ怒ってるんですか〜?」
ぷくっと頬を膨らませた樹は、小さなコック帽をジェシーから頭の上に乗せられて、キッ!と目を細めて怒った顔をしていた。
…もう北斗なんかいなくなっちゃえ!!
さっきの言葉が頭の中で反復された。
俺がいなくなれば、樹はまたプリンを焼いてくれるだろうか。
だって樹の作るプリンは皆も大好きだから。
俺は食べられなくなるけど……
そう考えると頭がズキズキと痛んだ。
でも俺のせいで、みんなが食べれなくなるのはもっと嫌だ。
胸のあたりもまたズキズキと痛んだ。
それが『心』だってことを、小さな俺はまだ知らなかった。
樹と見つけた小さな俺達だけが通れる秘密の抜け道。廊下でメイドや執事に会わなくて良かった。
走って走って走って、何度か苦しくなりながらも、ポケットから薬を出して対処して、ひたすら歩いた。
「うっ、……はぁ。、………いったぃ」
頭がクラクラする感覚から頭痛が酷くて、ご飯も食べてないから気持ち悪くなって、立ち止まる。
ヘトヘトになってしまった俺は、太陽から逃げたくて、桟橋の下に入った。
「うぅ、…はぁっ、………ここどこ……?
……じゅり……グズッ」
痛くていたくて、苦しくて。寒くて。
ブランケットの中で身を縮めて震えていた。
「はぁっ、…はぁ、ひゅっ、!ケボッケボッ!」
息を吸うたびに、苦しくなって、ポロポロ泣きながら咳をする。その勢いで嘔吐しそうになって、でも上手くできなくて、俺は、意識を手放した。
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作者名:あーちゃん | 作成日時:2020年9月3日 21時