70日目。 ページ39
あの後しっかり確認したけれど、どうやら本当に朝四時にくるらしい。
迷惑な話である。
いくら情報屋の朝が早いからって、四時は流石の私もまだ寝てるわ。
いつもなら、だけど。
今日起きたのは三時半。
恋は偉大、早起きくらいなんのその。
私は眠たい目をこすって、昨日とっておいた出汁の確認と、その他味噌汁の材料、それから朝ごはんのおかずになりそうなものを冷蔵庫から取り出した。
多分、昨日の晩御飯の残りと、白飯と味噌汁になると思うけど。まあそれでいいだろう。朝早すぎだし、多少手を抜いても許されるはずだ。
一通りの準備が終わったところで、わたしは店の前の掃き掃除でもしようと外に出た。
「うわあ」
霧である。天気は霧。夜中の三時だから暗いし、雲があるのか晴れてるのかすらもよく分からない。
とりあえず少しだけでも店の前を掃除しよう。
箒を持ってさっさと店の鍵を閉める。
「……あれ?」
おかしい、息が苦しい。
必死に霞む頭を叩き起こして周りを見ると、たくさんの人影が見えた。どうやら全員、念能力者っぽい。
そこで私はやっと気づいた。
ああ、これ、霧じゃない、何かの薬だ……!!
力が入らなくなったわたしを誰かが抱え上げたのが分かった。元からそんなに強くない私は、薬を盛られたらできることがもうほぼ無い。
ここまできたら、念に頼るしかない。
眠気と必死に戦いながら、全神経を集中させて私の店を思い浮かべる。
そう、私の店。私が具現化させた店だ。
♢
なるべく隠すようにしてきたが、私は具現化系能力者だ。
「私の領域(マイ・ベストフィールド)」
要は、自分好みの建物を建てる、それだけである。
建てることができるだけで、自在に消すことは出来ず、要らなくなったら物理的に壊すしかない。
また、一度に二つ以上建物を建てることは出来ない。
ただし、店に一歩入って仕舞えばそこは私の縄張り。
店に入った者の情報を、何をしなくとも細かく読み取ることが出来る。
初めて会った時、ギタラクルの姿だったイルミをイルミだと見抜けたのは、その能力のおかげでもある。言わなかったけど。
それから、半径1km以内にいれば、「私の領域」の中にある小さなものを動かすことができるのだ。
今回使う能力はこれ。
意識を集中させて、書き置きを残す。
誰でもいい、誰か、誰か気づいてくれれば。
最後の一文字を書き終わった瞬間、ぷつんと糸が切れたみたいに店が見えなくなって、そのまま私の意識も闇に沈んだ。
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バナナ - とっても最高でした!!有難うございます!!更新待ってます!! (2022年9月20日 2時) (レス) id: e7b90db1c1 (このIDを非表示/違反報告)
どらやき(プロフ) - 孤歌さん» ありがとうございます!面白いと言っていただけて嬉しいです……!これからもよろしくお願いします! (2018年7月3日 23時) (レス) id: a2747e3aed (このIDを非表示/違反報告)
どらやき(プロフ) - みーたんさん» コメントありがとうございます!ぜひ続編でもお付き合いいただけると嬉しいです! (2018年7月3日 23時) (レス) id: a2747e3aed (このIDを非表示/違反報告)
孤歌(プロフ) - 初めまして凄く面白いですね!更新待ってます(゜∇^d)!! (2018年7月1日 15時) (レス) id: 5a595ce298 (このIDを非表示/違反報告)
みーたん - 一言で言うとやばすぎますね (2018年6月24日 20時) (レス) id: 46104a2fe8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:どらやき | 作成日時:2016年1月24日 18時