雪と炎のシンフォニー２【爆豪勝己】 (ページ7)

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不器用な気遣いページ7

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焦凍の言う通り、Aがいつも乗る電車よりは人の混み具合はマシだった。
とはいえ、人が多いことには変わりない。

つり革競争に敗れたAは、焦凍の腕を掴んで電車の揺れをやり過ごしていた。

「あ、轟兄妹だ」

誰かが言った言葉に反応し、周囲が２人を見つけて注目する。

「本当だ。仲が良いね」
「昔テレビで見た時は小さかったのに大きくなったね～」
「そりゃあ、成長してるに決まってるって！」

４０代のサラリーマンがしみじみと昔の話をする。

エンデヴァーに双子が生まれたというニュースは、当時話題になった。
見知らぬ人に自分が生まれた時のことを知られているなんて、なんだか気恥ずかしい。

「２人とも、良いヒーローになりなよ！応援してるからね！」

電車を降りる時に背中に掛けられた言葉。
Aは思わず足を止めかけた。

(２人ともって、私も……？)

昇降口で焦凍と別れてAは保健室へと向かった。
ノックをして入れば、リカバリーガールは奥に誘導した。

火傷の具合を診たいからと、シャツを脱ぐように言われる。

「うん、火傷はもうないね」
「あの時に全部治してもらってますよ？」
「念のためさ。エンデヴァーに頼まれてね」
「え？」

リカバリーガールの口から出てきた父親の名前に、目を瞬かせる。

「女の子だからね。跡が残ったら大変だから、ちゃんと見てほしいって」
「……まさか」
「本当だよ。養女に出したからって娘じゃなくなったわけじゃないよ。ちゃんと大事な娘さ」

あんたの体のことを思って、試合を止めるように言ってただろ？と。
それは父親の不器用な気遣いだと暗に教えてくれた。

(なによ……今更……)

放っておいたくせに、突然父親のように振る舞われても戸惑いしかない。
でも、なんだがむずがゆい気持ち。

娘としてみてもらえて嬉しいと思う自分もどこにかにあった。

「ありがとうございました」

お礼を言って保健室を出た。
ちらちらと自分に向けられる視線を感じながら教室へと向かう。
その道すがら、ある人物と出くわした。

「あ……」
「……」

つり上がった赤い目がAを捉える。

まさにこの場所は彼と初めて出会った場所だった。
あの時に自分に向けられた鋭い視線を思い出す。

「おはよう、爆豪君」
「…………おぅ」

そんな最初の出会いを、きっと彼は覚えていないだろう。

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