雪と炎のシンフォニー２【爆豪勝己】 (ページ35)

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隠し事ページ35

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休日は兄と一緒に試験勉強をしていた。
机で向かい合って黙々とノートに文字を書き込む。

(ここが終わったら休憩しようかな)

先ほど姉の冬美がおやつを差し入れてくれた。

Aにはケーキと紅茶。
焦凍には和菓子と緑茶。

昔から２人の好みは面白いほど反転していた。
１０年近く経った今もそれは変わっていない。

「A」
「んー……なぁに？」

手を止めて向かいに座る人物を見れば、色の違う２つの瞳がAを見つめていた。

「最近、朝は随分とギリギリまでＡ組にいるじゃねーか」
「焦凍と離れたくないだけだよ」

いつもの調子で答える。
本当のことだから。

焦凍は「そうか」と短く相づちを打った。

離れていた時間を埋めるかのように、２人の距離はぐんと縮まった。
失った時間を少しでも取り戻したいというAの思いを、焦凍は汲み取ってくれている。

しかし譲れないところは譲れない。
頑固なところは２人とも同じだった。

「何かあんのか？クラスに居づらいとか」
「そんなことないよ」

いつもの調子で答える。
嘘だから。

「ただ、うちのクラスよりＡ組の方が居心地が良いってだけ」

ほんの少しだけ真実を加えた。

煩わせてはいけない。
心配させてはいけない。
隠し通さなくては。

それだけがAの頭を駆け巡っていた。

＊＊＊＊

翌朝、Aは焦凍と一緒に登校していた。
下駄箱で靴を履き替えてから、焦凍にくっついてＡ組に行くのが最近の習慣。

生徒たちは毎朝訪れるAを快く迎えてくれるので、Ａ組の一員になったように思えて嬉しい。

「──Aさん」
「……っ！」

最近の悩みの種である教育実習生の菊見の声だ。
名字ではなく名前を呼ばれてビクッと肩が跳ねる。
兄と一緒にいるからあえてなのだろうが、呼び方に嫌悪感を覚えた。

「……なんでしょうか」
「補習だけど、今日はどうだ？」
「補習？」

菊見の言葉に焦凍が反応する。
Aが授業に遅れているので、それを取り戻すための補習だと説明する。

一緒に試験勉強をしている焦凍なら、Aに補習は必要ないと分かるはずだ。
第三者の言葉があれば、きっとこの人も諦めてくれるだろう。

そう、思っていたのに。

「A、ダメじゃねぇか。ちゃんと補習を受けねぇと」
「え……？」

兄の口から出た言葉は意外なものだった。

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