雪と炎のシンフォニー２【爆豪勝己】 (ページ31)

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繋がれた手ページ31

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爆豪の鬼のような形相に男子高生たちは固まっていた。

その光景は“蛇に睨まれた蛙”という言葉を見事に体現していた。
体育祭の表彰式を知っている者にとっては、彼がとても恐ろしい人間に映っていることだろう。

「オラ、いくぞ」

くいっと引き寄せられるように手を引かれ、一歩彼に近づく。
歩き出した爆豪に続くようにAも足を動かし、遅れて上鳴が隣に並んだ。

「Aちゃん、大丈夫？」
「え、あれ？上鳴君……？う、うん……なんとか」

どういう経緯でここにいるのか分からない上鳴を見て驚きつつも、質問に答えた。
彼は「良かった～」と安堵の表情を浮かべる。

「ここら辺ナンパスポットでもあるからさ、ああいう奴ら多いんだよ」
「ああいうの、初めてで……。どう対処したら良いか分からなくて……」

正直助かった。
断ったところですんなりと解放してくれそうには見えなかったから、困っていたのだ。

「初めてって……中学の時とかは？普通にありそうなのに」
「ないない。学校が厳しくて、休日でもあまり外を出歩くなって言われてたから」
「ふ～ん。Aちゃん、中学はどこに行ってたの？」
「百合咲女子学院」
「ゆり……っ、え！？めっちゃくちゃお嬢様の学校じゃん！！」

上鳴りはAが口にした女子校の名に、目を見開いて驚いていた。

百合咲女子学院。
ある一定の水準を満たしたものしか入学できないお嬢様学校。

“百合咲生たるもの～”が口癖の先生に囲まれて過ごしてきたAにとって、ナンパというものは漫画やドラマでした見たことがなかった。

「まさかこんな体験ができるなんてねぇ。もう二度とごめんだけど」
「もっと質の悪いやつもいるから気をつけて。マジで」
「うん、ありがとう」

上鳴が会話で気を紛らわせてくれたお陰で、冗談を言えるくらいに落ち着きを取り戻すことができた。
それともうひとつ。

左手の先に繋がれている大きな手。
手首や腕をを掴まれることはよくあったが、手のひらを合わせるように繋がれたのは初めてだ。

１歩前を歩く爆豪の表情は見えないが、離されることのないこの手は彼の小さな気遣いなのかもしれない。

自分でも自覚できるくらい震えていたから。

(焦凍とはまた違う手……)

手のひらの皮が厚く、ごつごつした感触。
なぜだろうか、この手を今は離したくないと思った。

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