雪と炎のシンフォニー２【爆豪勝己】 (ページ27)

今日:65 hit、昨日:177 hit、合計:1,582,619 hit

お見舞いページ27

.

無事を確認して落ち着いたところで、Aは兄から離れることはなかった。
右腕に抱きついてべったり甘えモード。

そんなAに緑谷は素朴な疑問を口にした。

「Aさん、一人で来たの？」
「ううん。爆豪君と」
「えっ、かっちゃん、来てるの！？」

緑谷は振り返り、開いたままの扉を凝視した。
その眼差しは怯えなのか期待なのか、Aには判断が難しかった。

「エレベーターのところまでね。もう帰ったんじゃないかな？」
「そ、そっか……。Aさん、職場体験は大丈夫なの？」
「うん……一応。あの、このお見舞いが今日の体験内容……みたいな？」

本日の(名目上の)目的である見舞いの品を渡す。

ニュースのことで動揺して仕事に身が入らないため、事情を察したベストジーニストにここに向かわされた……なんて格好悪すぎて言えなかった。

＊＊＊＊

焦凍の無事を確認したAは、安心して病院を後にすることができた。

「遅ーんだよ！！」
「ば、爆豪君……！？」
「見舞いごときにどんだけ時間かかってんだオラ！！」

病院の敷地を出ようとしたところで待ち構えていた人物に怒鳴りつけられた。

「え？帰ったんじゃなかったの？」
「俺だけ帰ったらお前に押し付けたってバレるだろうがボケ。それに、無一文で１人でどうやって帰るつもりだ？」
「あ、そうか」

荷物を一切持たずに連れ出されたAは財布なんて持っていなかった。
その上、事務所までの帰り方も分からない。

「待っててくれてありがとう」

にっこりと笑顔を浮かべてお礼を言う。

「……チッ。オラ、次だ次」
「え？次って？っていうか送って来てもらった車は？」
「帰った」
「はぁ！？」

社用車は他にも用があるからと、Aと爆豪を降ろした後にオフィスへ戻ったらしい。
ということは、ここからは電車で帰るのだろうか。
制服のポケットに手を入れて無言で歩き出した爆豪の背中を追う。

(……あれ？爆豪君がいつの間にか制服に着替えてる)

来た時はジーンズ＋コスチュームだったのに。
車の中で着替えたのだろうか。

何か意味があってのことなのかと考えたが、学生が指導者もつけずコスチューム姿で街を歩いている方がおかしい。

「おい」
「なに？」
「切符だ」
「……どうも」

切符を渡され電車に乗る。
しかし降りろと指示された駅は、ベストジーニストのオフィスがある駅ではなかった。

.