愛することすら、許されない２【爆豪勝己】 (ページ10)

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★★ ページ10

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　Aは眠った。いや、気を失ったと言うべきか。今は穏やかに寝息を立てているが、さっきまでは俺の胸に顔を押し当てて震えていた。

　本人曰く、雷が原因ではないらしい。じゃあ何が？その疑問には、数分後に部屋を訪れたばーさんが答えた。

「幼い頃、お嬢様は誘拐されたことがあります」
「は？」

　俺にしがみつきながら眠るAに、大きめのブランケットをかけながらばーさんは言う。ダイナマイト柄だったが、つっこむタイミングは今ではない。Aを膝の上で抱え直し、ブランケットがずり落ちないように肩まで上げた。

「……それは高校の、」
「いえ、お嬢様が小学校に上がられる少し前です」
「そんなガキの頃に……」
「ええ。今日のように雷が絶えない大嵐の日でした」

　建物を取り囲むように聞こえる雷鳴は、まるでファンタジー映画で使われるの音声のようだった。ガキの頃に誘拐……。つまり、Aが怯えていた理由は過去のトラウマってやつか。

「……爆豪様がいてくださって良かったです」
「あ？」
「私は仕事があるのでずっと一緒にいられるわけではありませんので」
「……」

　ばーさんが俺をここに滞在させようとしたのは、そういう意図があったかららしい。申し訳なさそうに、でもどこか安心したように微笑んでいた。

「それに、お嬢様は私の前ではそんなふうに甘えたりしませんから」
「……」
「……むにゃ」

　頭を撫でてやると、少しだけ表情がやわらいだように見えた。

「この調子だと今夜は止みそうにありませんねぇ」

　ばーさんは窓を叩き付ける雨音に耳をすませて言った。

「爆豪様、どうぞ今日はお泊まりになってくださいね」
「は？」
「その方がお嬢様も、私も安心ですし」

　お茶を淹れながらさらりと言うばーさんの言葉に耳を疑った。

「宿泊されているホテルも出てこちらでお過ごしになればよろしいかと。ええ、そうです。それがいいですとも」
「いや、それはさすがに……」

　年寄り特有のペースで、どんどん話を進められて俺は思わず口をはさんだ。このばーさんには、A以上にペースを乱される。

「ご遠慮なさらず。部屋はたくさんありますので。お嬢様もきっと喜ばれます」
「Aが？」
「ええ。あなたがこちらに来られてから、お嬢様はとても楽しそうにされているのですよ」
「……」

　その言葉に偽りはないと、何の根拠もないのにすんなりと信じることができた。

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