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「それではお嬢様、爆豪様の案内をよろしくお願いいたします」
「えっ、」
ばーさんがAに向かって恭しく俺の案内を委ねると、Aはあからさまに動揺した。
「ばあやも一緒に、」
「私は荷物を片付けた後に参りますので」
「え、あ……そうですわね、分かりましたわ。爆豪さん、どうぞこちらです……」
Aは落ち着かない様子でエントランスからエレベーターホールに歩き出した。俺と二人きになるのが嫌なのか。そう思わせる雰囲気で。
雨が止むまでこのマンションに滞在してはと言い出しはのはばーさんだったし、A本人は気が進まないのかもしれない。
「安心しろ。雨が止んだらすぐに出て行くわ」
「え!?」
「は?」
俺の言葉にAが驚いた声を出したが、驚いたのはこっちの方だ。いや、なんで“どうして……!?”みたいな顔してんだよ。お前がそういう態度をとってたからじゃねえか。意味わかんねえなほんと。
意味もなく見つめあっていたが、エレベーターが到着した音に反応してAは俺から視線を外した。
「爆豪様、この度は大変助かりました。どうぞごゆっくり休まれてください」
「え、ああ」
「それでは後ほど」
会釈するばーさんに見送られながら一階に到着したエレベーターに二人で乗り込む。かなり広い。ベッドや本棚だって組み立てた状態で余裕で入るくらいに。
都内のビルでよくある、壁の一面がガラス張りで外が見渡せるやつだった。今は強風に煽られた雨で外の景色はほとんど見えないが。
「……」
「……」
無言。ただただ無言。エレベーターが上昇する音と、雨がガラスを叩きつける音がよく響いていた。
水滴で何も見えないガラスからAに視線を移す。Aは俺の視線から逃げるようにずっと俯いていた。
……コイツは、何を考えているんだろう。そんな疑問が絶えない。
突き放すような態度をとっていたかと思えば、いつもの調子に戻って普通に会話している。かと思えば厚い壁を作って遠ざかろうとする。
今もこうやって──……
「きゃあ……っ!!」
「っ!?」
……──何が起こった?
一瞬の閃光の後、腹部に鈍い衝撃。それは地面を割るように轟く雷鳴とほぼ同時だった。
「ぅ……、く……っ」
「A?」
見下ろすと、怯えた様子のAが縋るように抱きついていた。
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作者名:瑪瑙 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=agate0320
作成日時:2019年4月1日 22時