愛することすら、許されない２【爆豪勝己】 (ページ32)

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★☆ ページ32

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「……で、緑谷。あれはどんな事件だったんだ？」
「えっとね」

　僕と上鳴君は声を潜めて部屋の隅で会話をしていた。

　怒りの限界を迎えたかっちゃんが、上鳴くんのノートパソコンを振りかぶって攻撃をしかけてきたので、「僕たちはもう邪魔はしないから！」と宣言して避難してきたところだ。パソコンは貸し出されているものなので壊すまではしないだろうけど、その剣幕に臆してしまった。

「女の子が身代金目的で誘拐されたんだけど」
「それがAちゃん？」
「おそらく。で、相手がヴィランだったから警察とヒーローが協力して捜査してたんだ。アジトを突き止めたから助けにいったんだけど……」
「さっき言ってた罠ってやつか？」
「そう」

　数人の犯行と思われていたが、実は何十人も隠れ潜んでいて出撃したヒーローでは太刀打ちできなかった。天候も悪かったらしく、かなり苦戦したとヒーローの一人が後のインタビューで語っていた。

「その時だ！オールマイトが助けにきたのは！──あ、」

　つい興奮を思い出して声を張り上げると、かっちゃんにギロリと睨まれた。ごめんって。テンションと声と、ついでに姿勢を低くして話を再会した。

「助けにきたヒーローの中には重傷者もいたみたいだけど、人質に怪我はなし。犯人グループは全員逮捕されて無事解決！」
「おお、さすがオールマイトだぜ」
「でしょ！さっきニュースに上がっていたのは、このうちの一人が逃げ出したってことだと思う」

　なるほどな〜と上鳴君は頷く。

「じゃあこの話はAちゃんには知られない方が良いのかもしれないな」
「うん。僕もその方が良いと思う」
「でもニュースになってるから」
「それは大丈夫じゃない？わざわざ調べないと出てこないし。Aさん、ダイナマイトの情報を得るために日本のニュース見てただけで、かっちゃんがこっちにきてからはあんまりって言ってたし」
「そっか、じゃあ大丈夫か」
「うん。僕たちがうっかり話題に出さなければ」
「大丈夫大丈夫！俺、プライベートでは仕事の話なんてカケラもしねーし！」

　幼い頃の誘拐。下手をすれば心に深い傷を追っている可能性もある。克服できたとしても、何かのきっかけでトラウマとして蘇ってしまうこともあるから。

　僕と上鳴君は目を合わせて頷いた。

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