愛することすら、許されない２【爆豪勝己】 (ページ16)

今日:4 hit、昨日:3 hit、合計:82,071 hit

☆☆ ページ16

.

「な、何してるんですか！？」

　思いっきり自分の額に拳を殴りつける爆豪さんに驚くしかなかった。

「あ……いや、気にすんな」
「気にします！ああもう、こんなに赤く……」

　額に押しつける拳を両手で握り込んで引き離した。随分と強烈な一撃だったらしく、殴りつけた部分は赤くなっていた。

「…………A」
「はい」
「あれは、俺の勘違いだった」
「勘違いですか？」
「お前には婚約者がいて、卒業したらすぐにそいつと結婚するものだと思い込んでたんだ」
「え！？」
「それをお前は心から望んでいると言ってるのかと……」
「はい！？私、そんなこと──」
「だから俺の勘違いだって言ってんだろ」

　決まりが悪いのか、私の視線から逃げるようにふいっと顔を背けた。

「勘違いだったけど……その時の俺は許せなかったんだ。俺以外を選ぼとしたお前を。それをどうにもできない、無力で意気地のない無様な俺を」
「……」
「俺の気持ちも知らないで、“卒業まで仲良くしましょうね”なんて都合のいいことを言い出そうとしたから、カッとなって口を塞いだ」

　唇で。顔を背けていた爆豪さんがこちらを向き、私の頬に手を添える。親指の腹で下唇をゆっくりとなぞられて、その艶かしい動作に思わず息を呑んだ。

「…………じゃあ、あの時のキスは」
「お前は、俺が好きでもない女にキスする男にでも見えるか」

　赤い目が近づいてくる。逃がさないとばかりに、まっすぐに私を見つめて。

「……いいえ」
「じゃあそう言うことだ。あん時も、今も」

　視界をすべて爆豪さんで塗りつぶされた頃には、お互いの唇は重なっていた。

「──ん……は、」

　触れるだけのキスだけれど、慣れない私は息を止めてしまう。苦しくなって、一度唇を離して酸素を取り入れると、どちらのものとも言えないアルコールの匂いが鼻をくすぐった。

「A」
「はい」
「好きだ」
「……っ、あ、あの」
「無理に応えなくていい。ま、お前の本心は分かってっけど」
「うぅ……」
「ただ、なんでそこまで頑なになるのかを知りてぇ」
「……」

　何も言えずに俯いたままでいると「ま、いいけど」と、くしゃっと頭を撫でられた。その平和を守るための優しい手がとても愛しくて。

　爆豪さん。
　私が過去にヒーローの命を奪っていると知ったら、あなたはどんな顔をしますか。

.