愛することすら、許されない２【爆豪勝己】 (ページ12)

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☆☆　懐かしい日々に想いを馳せてページ12

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　雷が鳴り響く雨の日は嫌いだ。

　思い出したくない日のことを思い出す。

　──いいえ。忘れてはいけないのだ。私は覚えていなくてはいけない。

　私を助けて命を落としたヒーローのことを──……

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　シャッターが閉じられた窓の向こうでは、まだ雷鳴が響いていた。──でも大丈夫。

　“そばにいてやる”

　その言葉がどんなに私の心に響いたか。私の体を包みこむ腕が。頭を撫でる手のひらが。優しさを含む声が……──

　臆病な私に勇気をくれるようで。

「爆豪さん、聞いてほしいことがあるんです」
「なんだ」
「私(わたくし)、幼い頃に……」

　──ぐぅ……、きゅるるぅ……

　意を決して話始めた私の話を遮ったのは、自身の空腹を訴える音だった。ああもう、なんでこんなタイミングで。

「えっと……あのっ」
「そういや腹減ったな」
「…………はい。あら、テーブルにメモが」

　ばあやの字で「お嬢様、爆豪様」と丁寧に書き綴られていた。内容を確認していると、頬が触れるくらいすぐ横に爆豪さんが顔を出した。

「うえぁ……っば、爆豪さん！？ちち、近いですっ」
「あ？今更なに驚いてんだアホ。……で？なんて書いてあるんだ」
「その……“食事は用意できています。ご入り用であれば内線でお呼びください”と」
「……こんな時間に呼び出すのは悪ぃな。適当に温めて食うぞ」

　時計は二十二時を回っていた。お昼過ぎにこのマンションに帰ってそれからすぐに……と考えると、たっぷり眠ったようだ。

　爆豪さんはキッチンの照明をつけて、冷蔵庫やお鍋の中身を確認していた。

「おーおーさすがばーさん。品数豊富だな。ふー……ん。お、鍋の中はビーフシチューか。うまそうだな」
「ばあやのビーフシチューは絶品ですわよ。ぜひ爆豪さんに食べていただきたいです！」

　私が強く薦めると、爆豪さんは「そっか」とシチューを温めはじめた。その隣に並んでシチューのにおいを吸い込む。

「以前、私の好きな食べ物は“甘いもの”と言いましたが、ばあやの料理も大好きなんですよ」
「へぇ。どんなもんか楽しみだわ。皿とってこい」
「はい」

　普段はキッチンに入らせてもらえないので、こうやって食事の準備をするのは新鮮だ。楽しい。そう思いながら私はダイナマイトをイメージしてデザインされた顔がプリントされた皿を運ぶのだった。

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