愛することすら、許されない２【爆豪勝己】 (ページ1)

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☆☆　空っぽの心を満たしてページ1

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　私は爆豪勝己に恋をしている。
　それは誰よりも自分が一番理解している事実。
　だけど私はそれを認めない。認めてはいけない。心の奥底にしまっておくべき感情だ。夢を選んだ自分にとってはきっと邪魔なだけ。

　そう理由をつけて、日本を発ったと同時に切り捨てた……────はずだった。

☆

《日本では先日デビューを果たしたニューヒーローが、さっそく活躍を見せています。特に注目を引くのが雄英高校出身の『デク』、『ショート』、そして『ダイナマイト』の三人です！》

「ダイナ……マイト……？」

　閉鎖されたＩ・アイランドでもメディアは健在で、世界中の情報が舞い込んでくる。特に日本のヒーロー情報は大きく取り上げられていた。

　大通りの中心にある大型スクリーンから齎(もたら)された『ダイナマイト』の情報。
　画面越しに彼の姿を見た途端、私の抑えていた感情が漏れ出した。

　やっぱり好き。あなたがこんなにも好き。でも、もうその気持ちを伝える術はない。会うことも、声を届けることすら叶わない。

　だから、せめて…………『爆豪勝己』に会えないのなら『ダイナマイト』に心を捧げようとそう思ったのだ。

☆

「いらっしゃい、姫さん」
「ごきげんよう、店長。予約しておいた商品は届いてますか？」
「もちろん」

　心を躍らせながら来店する私を店長は快く迎えた。この都市に唯一あるヒーローグッズ専門店。開き直って豪快にグッズを収集していたら、いつの間にか彼からは『姫さん』と呼ばれるようになっていた。

「姫さんは本当にダイナマイトが好きなんだね」
「はいっ」
「袋もダイナマイト柄にしとくね。未使用のも中に一枚入れておくから」
「まぁ！ありがとうございますっ」

　ダイナマイトのヒーロー活躍がまとめられたＤＶＤと特典のポスターを受け取り、お礼を言う。また宝物が増えた。これだけで幸せだった。

　──なのに。

　あなたは私の目の前に現れてしまった。夢でもなく、現実として。

　私の名前を呼んで。私に触れて。私を好きだと言った。その時の私の心は最高潮に高鳴っていた。目の奥が熱くなって、涙が溢れそうになった。震える口で「私(わたくし)もです」と言いそうになった。

　けれどそれはいけないこと。だから私は感情と言葉を飲み込んで、精一杯の笑顔を浮かべる。

　偽りの笑顔を。

　愛することすら許されない、自分の選んだ道を呪いながら。

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