愛することすら、許されない【爆豪勝己】 (ページ9)

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☆★ ページ9

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「……明、やっぱり休みます。ダイナマイトの幻影が見えてきました」
「あ゛！？」
「幻覚を見てしまうなんて」
「オイ、ちょっと待て」
「幻聴まで……私(わたくし)、相当疲れているんですわね」

　立ち上がったAは、私に睡眠を宣言して拙い足取りで仮眠室を目指した。ダイナマイトが吊り上がった目で睨みつけているんですけど。生で見ると迫力ありますね。

「いえA、合ってます。こそにいるのはあなたが敬愛する『ダイナマイト』その人です」
「……はい？」

　徹夜続きで幻覚を見ていると思っているAに、そこにいるヒーローが現実であると告げれば、目をこすりながら私を見た。そしてダイナマイトに視線を戻し、もう一度まじまじと観察するように見つめる。

「……本当に、」
「いい加減、目ぇ覚ませやアホ女」

　ダイナマイトは一歩一歩と足を進めます。手を伸ばし、彼女の頬を撫でるように添えた。それでようやく現実だと理解したAは大きく目を見開き──……

「き、きゃあぁぁぁぁあああっ！！」

　叫んで逃げた。

「は？」
「え？」

　これには私も驚きました。黄色い声ならまだしもAが発したのは恐怖というか、あり得ないものに遭遇した時にあげる奇声と言いますか。ホラー映画でよく耳にするアレです。

「はわわわわ……っ」

　大ファンのヒーローを目の前にして混乱してしまったんですね。目にも留らぬ速さで奥の仮眠室に閉じこもってしまいました。

「ちょ──オイ！！」

　呆気にとられていたダイナマイトは、扉が閉まる音と同時に動きだし扉に手をかけた。しかし中から鍵が掛かっているようで開けることは叶わなかった。

「てっめ、鍵まで掛けやがって！！出てこいやっ！！」

　迫力満点で扉を叩いて開扉を促します。その姿たるや借金を取り立てにきたヤのつく職業の人です。シチュエーションや衣装つきで想像して、笑いがこみ上げてきました。

「あ゛ーークソ！いい加減にしねーと爆破すっぞ！！」
「あ、無駄です。その部屋の扉はA特製の防弾かつ防爆の扉です」
「は！？防弾！？防爆！？──ンでそんなモンがこの部屋に備わってんだよっ！！」

　私のアドバイスに彼は怒りの形相で振り向いた。

「以前、うっかり部屋の中で爆発を起こしてしまいまして、見事にその部屋の扉が吹っ飛んでしまったんですよ。その時の失敗を踏まえて強固な扉を」
「爆破することを前提に考えんなや！！」

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