愛することすら、許されない【爆豪勝己】 (ページ5)

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★★ ページ5

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「あ゛ーー……着いた。無駄に十三時間も飛行しやがって」
「お疲れ様です」

　肩の関節を鳴らしながら飛行機のタラップを降りる俺に、客室乗務員が労いの言葉をかけた。“無駄に”というのは、十三時間もかからないであろう場所に、“あえて”十三時間もかけて行ったことへの文句である。正確な場所を特定されないための対策らしいが、時差と太陽の位置でなんとなく予想はできる。

「……チッ、もう日暮れかよ」

　沈みゆく太陽の眩しさに目を細めた。

　荷物を受け取って俺は空港から宿泊先のホテルへ向かった。場所はAが留学先に選んだ大学のすぐ近く。籠手のメンテナンスという名目を利用して特定した。俺は高一の夏に一度、その大学に訪れている。Aにつき合って見学した大学だ。

　あの時に留学はすでに決まっていたのだ。アイツは旅行ではなく、夏休みを利用して『留学先の下見』に来ていたんだ。

──この大学でサポートアイテムの勉強ができるなんて……

　見学中にAが言ったセリフを思い出した。

　この大学で勉強する人間を羨ましがっている言葉だと思っていた。今考えると、将来ここで勉強する自分を思い描いてのことだったのだ。

「はぁ～～～～……、……気づくの、遅ぇわ」

★★

タクシーは大学の真向かいにあるホテルの前で停まった。

「着きましたよ。あの、よろしければサインを……」
「あ？」

　初老の運転手が求めてきたのは決済のサイン……ではなく色紙へのサインだった。「孫がファンでしてね……」と遠慮がちにペンも差し出す。

　いつもなら突っぱねるところだが、今日は気分がいい。キュ、キュ、と音をたてて書き上げた色紙を運転手に放り投げる。と、同時にホテルのドアマンが車のドアを開けた。

「ようこそお越し下さいました、爆豪様」
「ああ」
「お荷物をお運びしますので、レセプションでチェックインをお願いします」
「ん」

　車を降りて、向かいの大学を見上げる。物々しい雰囲気が漂うその建物に、俺は唇の片端を上げた。

「待ってろよ、アホ女」

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