０４★★「それは大変ですわ」 ページ9
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図書館に通う日が来るなんて、今までの俺からしたら考えられないことだ。そもそも図書館なんて、夏休みの宿題のために利用した時以来だ。
ずらりと並ぶ本に用があるわけでもなく、俺は館内を歩き回る。自習スペースで勉強する女を見つけて、無言で向かいの席に座った。
「ごきげんよう。今日もお会いしましたわね」
「……ああ」
俺たちの日常では馴染みのない挨拶に素っ気なく応える。
会話なんて気の利いたことができるわけもなく、じゃあなぜここに来たと問われても返答に困るので、鞄から教科書とノートを出して広げた。
「最近よくいらっしゃいますわね。
「あ？……まぁ」
「ここの図書館は落ち着きますよね。学園の図書室は少し騒がしくて……かといって自習室は静かすぎて息が詰まりそうで……」
この図書館くらいがちょうど良いです、と女は問題を解きながら話し続ける。会話というにはお粗末な相槌を打つ俺に気を悪くする様子はない。
「高等部からは単位制になって、時間割の自由度が広がったのですけれど」
今日は周囲の席に人がいないのでよく喋る。俺はそれが鬱陶しいと思わず参考書に目を通しながら耳を傾けていた。
「ヒーロー科なのに、ほとんどの科目が理数系に偏ってしまって」
「ヒーロー科？お前が？」
「はい。ヒーロー科の支援コースです」
「は？」
俺は思わず問題を解いていたノートから顔を上げた。ヒーロー科？こいつが？……というか、“支援コース”とはなんだ。それを含めての「は？」だった。
「あ、え……と、ヒーローが活動するにあたって何かしらの“支援”の勉強をするコースです。雄英で言うところのサポート科や経営科ですね」
ああそういうことか、と納得した。それでも意外だ。どう見ても“お嬢様”なこの女がヒーローに興味があるとは思えない。
「爆豪さんは普通科ですわよね？」
「……ヒーロー科」
「え？」
「ヒーロー科だ」
もう一度言うと、目の前の女は手を止めて顔を上げた。そして困ったように頬に手をあてた。
「……まぁ、それは大変ですわ」
「は？何がだ？」
「
「あ？」
「だって──……」
「雄英のヒーロー科は星麗学園のヒーロー科を良く思っていませんでしょう？」
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作者名：瑪瑙
| 作成日時：2018年10月25日 0時
