ある春休みの日に２ ページ33
.
翌朝。
その日は春らしく暖かい日だった。
爆豪は学校の寮からAに指示された待ち合わせ場所へと向かっていたのだが──……
「オイ、半分女」
「……なんですか」
「離れて歩け」
「私もこっちなんです」
「じゃあもっと後ろ歩けや」
「私だって急いでるんです！ 次に来る電車に乗れないと遅刻なんです。爆豪君がゆっくり後ろを歩けば良いじゃないですか！」
「俺だって急いでるわ！！」
早足の爆豪と同じ速度で隣を歩くのは、轟の恋人であるサポート科の癒月だった。
校門を出て駅に向かっていると、いつの間にか同じ速度で隣を早足で歩いていたのだ。
離れて歩けと言ってもスピードを緩めることはない。
ならば自分が速度を変えれば良いのだが、それでは負けた気がする。
爆豪は隣を歩く癒月に向かって文句を言い続けるのであった。
そんなやりとりをしているうちに駅に着いた。
改札を通ってタイミングよく到着した電車に乗り、ようやく離れられるとと思いきや──……
「……お前、どこまでついてくる気だア？」
降りた駅の改札口でまた鉢合わせした。
向こうも同じことを思っているのか、うんざりとした表情で爆豪の隣を早足で歩いていた。
「爆豪君こそ、こんなところまでいったい何の用ですか？」
「テメェには関係ェねぇだろ」
「そうですね。私だって爆豪君の日常に興味もありません……し……、」
駅の出口に差し掛かったところで癒月の声が途切れた。
早足に歩いていた足を止めて、出口の向こうにある公園の方をまっすぐに見つめていた。
その視線の先を辿った爆豪も同じように足を止めることとなる。
「……なるほど、そう言うことでしたか」
「どおりでテメェなんかと同じ道を通ってたワケだ」
「その言葉、そっくりそのままお返しします」
現状を把握して納得した２人は目を細めて同じ方向を見る。
そこはAが待ち合わせとして指定した場所であった。
「……ッ、いい度胸じゃねーかッ」
「まあまあ……」
爆豪は額に青筋を浮かべ、癒月は苦笑いを浮かべた。
待ち合わせまでの時間に余裕がなかったから考えもしなかったが、落ち着いてよく考えたら予想できたはずだ。
「ねぇ焦凍〜あとでパフェ食べにいかない？ カップルで食べるとずっと一緒にいられるって噂の！」
「……カップルじゃねぇと意味ないんじゃねぇか？」
「え〜そっかなー」
２人の視線の先には、白昼堂々べたべたとくっつく轟兄妹の姿があった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2416人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
パチ麻呂(プロフ) - 続編うれしいです、作者様もどうかお身体に気をつけてください！ゆっくりでもいいのでずっと待ってます(;_;) (2020年5月8日 0時) (
レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
天音(プロフ) - 完結ですか？？この作品ものすごく好きだったので完結するのが悲しいです((泣)) (2020年3月5日 20時) (レス) id: 3aa825630d (このIDを非表示/違反報告)
鳳＊(プロフ) - えっ、、、イラスト美味すぎん、、、？作品内容もバリ良きだけど、イラスト書いている私からしてもこりゃ上手いわ……！ (2020年1月16日 17時) (レス) id: 63e109079e (このIDを非表示/違反報告)
紫陽花(プロフ) - お話は面白いし絵も素敵です。 (2019年10月24日 2時) (レス) id: 4b6f8d26fa (このIDを非表示/違反報告)
ツートップは神でしょ - すいません！轟さんバージョンの作品を見つけました！知らずに聞いてすいません・・・でもこのシリーズとっても大好きなのでこれからも頑張って下さい！！ (2019年5月8日 20時) (レス) id: 1be51e16a1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瑪瑙
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=agate0320
作成日時：2018年11月14日 22時
