失われた雪の欠片６ ページ13
.
冷たい風に乗った枯葉が頬をかすめたことにより、爆豪は弾かれたように虚ろな瞳を見開いた。
(なんで俺はここに……)
爆豪がいた場所は雄英高校の敷地にある中庭の奥。
ヒーローコスチュームを着て佇んでいた。
──やる気がないなら外で頭を冷やしてこい。
(……ああ、思い出したわ)
戦闘訓練で自分の番が終わり、無気力に何もないところを呆然と見つめていたら相澤にそう告げられた。
通常なら何が何でも出ていくかと憤慨するところだが、爆豪はその言葉に従って演習場を出た。
そして、あてどなく校舎の外を歩いてここに辿り着いたのだ。
「──……A」
無意識に足を運んだ場所を見つめながら呟く。
ここには思い出が詰まっている。
Aと過ごした時間を思い返しながら空を仰いだ。
ザッ──……
「……っ！？」
「あ、」
砂を踏む音に反応して反射的に振り返る。
「──なっ、てめ、なんで……っ」
猫かと思ったが耳に届いた声はとても懐かしく、会いたいと心の奥底で願っていた人物のものだった。
「えと……学校の中を歩き回ってたらいつの間にか中庭に出ちゃって……」
姿を見せたAは戸惑いがちに、ここへ来た経緯を話す。
「迷ってここに……」
その姿形はAそのものなのに、どこか雰囲気が違う。
よく見れば彼女のトレードマークとも言えるカーディガンを着ていないし、髪を結んでいるのは平凡なヘアゴムだった。
「爆豪君は？ 今は授業中だけど……」
「──チッ、別に関係ねーだろ」
「そう……だよね」
刺々しい言葉にAは「ごめんなさい」と謝った。
(──、なんでてめぇが謝るんだよ)
Aに非があるわけではないのに。
現状を受け入れられない狭量な自分に嫌気がさす。
爆豪はAから視線を外して歩き出した。
こんなところで向かい合っているのは気まずい。
頭も冷えたし演習場に戻ろうとした。
「──待って」
「あ？」
すれ違いざまに腕を掴まれた。
「あ、あの……戻り方がわからなく──ッ、くしゅんっ！」
「……」
「ッくしゅ！ ……んっくしゅッ」
Aはくしゃみを抑えきれずに何度も繰り返す。
改めて見ると防寒具を身につけていなかった。
１０℃を下回る気温の中でコートも羽織らずに外へ出ていたのだ。
寒いはずだ。
縋るように爆豪の腕を掴むAの手は寒さで震えていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2416人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
パチ麻呂(プロフ) - 続編うれしいです、作者様もどうかお身体に気をつけてください！ゆっくりでもいいのでずっと待ってます(;_;) (2020年5月8日 0時) (
レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
天音(プロフ) - 完結ですか？？この作品ものすごく好きだったので完結するのが悲しいです((泣)) (2020年3月5日 20時) (レス) id: 3aa825630d (このIDを非表示/違反報告)
鳳＊(プロフ) - えっ、、、イラスト美味すぎん、、、？作品内容もバリ良きだけど、イラスト書いている私からしてもこりゃ上手いわ……！ (2020年1月16日 17時) (レス) id: 63e109079e (このIDを非表示/違反報告)
紫陽花(プロフ) - お話は面白いし絵も素敵です。 (2019年10月24日 2時) (レス) id: 4b6f8d26fa (このIDを非表示/違反報告)
ツートップは神でしょ - すいません！轟さんバージョンの作品を見つけました！知らずに聞いてすいません・・・でもこのシリーズとっても大好きなのでこれからも頑張って下さい！！ (2019年5月8日 20時) (レス) id: 1be51e16a1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瑪瑙
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=agate0320
作成日時：2018年11月14日 22時
