自覚 ページ45
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「あ、ああ、あのっ、と、轟君っ、離──」
「──A、話がある」
離してほしいという言葉を遮るように轟が言葉を被せた。
とても真剣に訴える声になぜか拒否の言葉は出てこなかった。
「……わかりました。その前に手を……」
「このまま聞いてくれ」
掴まれている手は離れることはなかった。
どころかさらに力が込められる。
「その…………、保健室でのこと、悪かった」
少しの間を持たせて轟は話しはじめた。
背後から届く声はどこか弱々しく、仮免試験の不合格を報告した時に似ていた。
(また、その話……)
聞きたくないが、そんなことを許してもらえる状況ではない。
何を言われても泣き出さないように、覚悟を胸に抱いて受け止めることにした。
「びっくりさせた……っていうか、嫌な思いをさせちまったよな……。本当にすまない」
一度逃げられたからか、轟は気を遣いながら先を続けた。
「……体が勝手に動いたんだ。Aの顔がすぐそこにあって、それを見たらつい……口を向けてしまって」
(……ん？ ……え？？)
「Aはケガを治そうとしてくれたのに……。拒絶されるのも、仕方ねぇ──」
「あ、あの……っ」
Aは咄嗟に声をあげて振り向いた。
後ろから両手をそれぞれの手で繋がれているので、少し体勢が苦しい。
「この前のき……キスは、私が位置を間違えてしてしまったんじゃ……」
「……？ いや、俺が自分で顔を動かした」
Aとキスしようと思って──……
(……っ！？)
声も出せずに驚いた。
掴まれていた右手が自由になる。
驚くAの視線から逃げるように轟は顔をそらし、右手を自分の顔の前に浮かせていた。
「き、“キスしようと思って”って……、轟君、彼女がいるじゃないですかっ」
「彼女？」
轟はAの言葉を疑問を含めて復唱した。
少しだけ動きやすくなった体を回転させて轟と向き合う。
左手は繋がれたままなので、仲良く握手しているみたいな体勢ではあるが。
「八百万さんに告白してましたよね？」
「いや？ 相談には乗ってもらったが……？」
「相……談？」
首を傾げるAの顔をすり抜けるように轟が手を伸ばす。
後ろで１つの三つ編みにしていた髪を彼の手が攫っていく。
「ああ。そのおかげで俺はAが好きだって自覚できたんだ」
恭しい仕草で轟は三つ編みの先にキスを落とした。
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moeka(プロフ) - こちらの続編と轟兄妹との絡みを希望します。ぜひ検討して下さると嬉しいです。楽しみに待ってます。 (2021年6月28日 22時) (
レス) id: d61ed9781e (このIDを非表示/違反報告)
silver - どっちも好きですが、こっちが好き！ 続編を希望します！ (2020年11月7日 15時) (レス) id: 0515bcf5a2 (このIDを非表示/違反報告)
麗奈(プロフ) - 私はどちらかと言えば癒月ちゃんの話の方が好きです。こちらの続編を希望します！ (2020年3月23日 5時) (レス) id: acabdf4bd5 (このIDを非表示/違反報告)
ヨシ - 爆豪の方も、こちらの話も、好きです！更新頑張ってください！ (2018年12月5日 21時) (レス) id: 26236bbcfc (このIDを非表示/違反報告)
りんごあめ(プロフ) - 私癒月ちゃんの方が好きかもです。 是非続編希望します。この作品が、シリーズの中で一番好きです！ (2018年11月11日 0時) (レス) id: 949b3c86b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑪瑙
| 作成日時：2018年7月21日 1時
