従姉 ページ27
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正座のまま動かずにいるAの前で彼女は腰を折った。
「その制服……。ああ、そういえば雄英のサポート科に行ったんだって？ ま、あなた程度の個性じゃヒーロー科は無理ね」
飛羽はAにだけ聞こえるように顔を近づけ、バカにしたように笑った。
彼女はというと、雄英高校のヒーロー科を受験し、見事合格した。
──しかし、不幸なことに入学当日にクラスごと除籍されている。
自分のことを棚に上げて他人を貶めることに余念がないあたり、なんて都合のいい記憶力なのだろう。
「Aちゃぁん。昨日、紙で指を切っちゃってさぁ。治してくれない？」
絆創膏が貼られた指をAに向かって突き出す。
いつものことだ。
飛羽はわざと前日に怪我をしてAに治癒させる。
右手で治癒をするAは、他の従兄たちに比べて治癒がかなり遅い。
それを責め立てるために。
『この程度でお婆さまの後継？ 笑っちゃうわね』
嘲るようにいつも同じセリフを吐く。
Aは心を閉ざしてその悪意ある言葉を受け流していた。
「ほらほらぁ。次世代のリカバリーガル様？ 助けて下さる？」
飛羽は指先の絆創膏を外しながら口元に笑みを浮かべる。
その切り傷は、ばい菌が入って赤く腫れていた。
治癒しにくいようにわざとやったのだろう。
「……わかった、すぐ治してあげる」
「は？ 時間かかるくせに生意気」
いつもとは違う、強気な態度に飛羽は眉を不快に歪めた。
Aは飛羽の手を取り、傷から少し離れた場所に唇を落とした。
「ぇ……っ」
傷は一瞬で消える。
飛羽はあんぐりと口を開けてAを見下ろしていた。
「私ね……今まで右手で癒してたけど、本当はおばあちゃんと同じやり方で癒せるんだよ」
「は……？ え？」
Aがキスで傷を癒せることを知っているのは、両親とリカバリーガールである祖母だけ。
「────……っ」
ぽかんとしていた飛羽は、次第に表情を屈辱的なものに変え部屋を後にした。
Aはその後ろ姿を静かに見送る。
(使うなって言われたけど……バレないよね？)
バレたら怒られるだろうが、彼女が告げ口することはないだろう。
親族が知るとますますAを後継にしようという材料になる。
その日は飛羽の姿を見ることはなかった。
体調を悪くして寝込んでいるらしい。
不思議と悪いことをしたなんて感情は浮かんでこなかった。
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moeka(プロフ) - こちらの続編と轟兄妹との絡みを希望します。ぜひ検討して下さると嬉しいです。楽しみに待ってます。 (2021年6月28日 22時) (
レス) id: d61ed9781e (このIDを非表示/違反報告)
silver - どっちも好きですが、こっちが好き！ 続編を希望します！ (2020年11月7日 15時) (レス) id: 0515bcf5a2 (このIDを非表示/違反報告)
麗奈(プロフ) - 私はどちらかと言えば癒月ちゃんの話の方が好きです。こちらの続編を希望します！ (2020年3月23日 5時) (レス) id: acabdf4bd5 (このIDを非表示/違反報告)
ヨシ - 爆豪の方も、こちらの話も、好きです！更新頑張ってください！ (2018年12月5日 21時) (レス) id: 26236bbcfc (このIDを非表示/違反報告)
りんごあめ(プロフ) - 私癒月ちゃんの方が好きかもです。 是非続編希望します。この作品が、シリーズの中で一番好きです！ (2018年11月11日 0時) (レス) id: 949b3c86b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑪瑙
| 作成日時：2018年7月21日 1時
