-切島鋭児郎2- ページ24
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「それで……Aちゃんはどうしたの?」
流れる沈黙が気まずくて、切島はその後の状況を訊いた。
「理科室を外から氷漬けにして、2人きりの世界を演出してあげました」
「うわあぁぁ……」
「きっと助けがくるまで体を震わせて、身を寄せ合っていたんでしょうね」
嫌味混じりのいい笑顔で言う。
想像していた以上にひどい仕打ちだった。
(なるほど、向こうの校舎が騒がしかったのはそれが原因だったのか……)
爆破でも簡単には脱出できないほどの分厚い氷で閉じ込めたらしい。
轟を探す声があったのもそれをどうにかするためだ。
「あのさ。ちょっとでもいいから爆豪と麗日の話を」
「イヤです」
「な、なんなら俺が聞いてくるけどっ」
「余計なことをしないで。声をかけたのは私だけど、そういうことをして欲しくてここに呼んだわけじゃないの」
「……」
爆豪側にもわけがあるかもしれない。
一度話を聞いてみてはと、どんなに進言してもAは頑に拒否した。
「もし……それで私と別れるって話をされたら……、」
Aの表情に陰が差した。
気丈に振る舞っていたが、とうとうそれも保てなくなっていた。
瞳の水気が増して光の反射が強くなる。
「あ……」
そんなAの姿を見るのは初めてで、何も言葉が出てこない。
誤解だと言ってあげたいのにAの証言が頭にちらついて、爆豪の潔白の根拠が薄くなっていた。
「だから私はしばらくこの寮に閉じこもります」
「え?」
「幸い、明日から自由登校だし」
文化祭まで2週間を切った。
1学期の成績が良いクラスは、授業ではなく文化祭の準備期間にしても良いらしい。
つまり寮で作業をしても問題ない。
「切島君……これ、返しておいてくれる?」
Aは頭の後ろに手を持っていき、髪に括りつけていたネクタイを解いた。
着ていたカーディガンも脱いで丁寧に折り畳む。
「え、でも」
「しばらく勝己く──……爆豪君のことは考えたくないから」
無理矢理押し付けられたカーディガンとリボン。
受け取ったはいいが困惑しかない。
名残惜しそうに最後にひと撫でしたAの表情は、とても切ない物だった。
「気持ちの整理がつくまで外部との連絡は一切とらないから。切島君たちとも、焦凍とも……ね」
そう言って、Aは随分前から着信の止まらないスマホの電源を落とした。
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華 - 作者さまが、書かれている小説はとても面白くキュンキュンさせてもらってます!イラストも完璧で!ところで、雪と炎のシンフォニー6のパスワード教えてもらえないでしょうか?? (2018年8月24日 17時) (レス) id: 8f943258c6 (このIDを非表示/違反報告)
蘭羅(プロフ) - いつも読ませていただいてます。作者さまが書いてくださってる爆豪くんがほんとに私の理想通りでキュンキュンが止まりません!(>_<)イラストも素敵です!これからも作品を楽しみにしています(^-^) (2018年8月13日 1時) (レス) id: 8f11b721e2 (このIDを非表示/違反報告)
瑠嘉#雅 - 続編楽しみにしてます。いつ投稿できそうですか? (2018年8月9日 23時) (レス) id: bd7f78cad2 (このIDを非表示/違反報告)
四宮 - 回答して下さりありがとうございます!プロヒーロー編の先行公開も読ませていただきました!すっごく面白かったです!楽しみに待ってますね! (2018年8月6日 23時) (レス) id: deef7ae511 (このIDを非表示/違反報告)
四宮 - いつも楽しく読ませていただいてます!あの、質問なんですけど、その6のプロヒーロー編って、書いていただけるんですよね?気になっちゃって笑すみません… (2018年8月6日 13時) (レス) id: 329a268fec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑪瑙 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=agate0320
作成日時:2018年7月7日 21時