爆豪勝己の帰宅 ページ38
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爆豪は寮から学門までの道のりをAと歩いていた。
「今は明るいけどすぐ暗くなるから気をつけてね」
「おぅ……」
生返事をしながら周囲を見回す。
それが気に入らないのか、Aは眉を寄せて服を引っ張った。
「……ねぇ、ちょっと聞いて──」
誰もいないことを確認して軽く口付けた。
「な……え……」
不意打ちのキスにぽかんとしているAに満足げに笑い、学校の門を出た。
ワンテンポ遅れてから「いってらっしゃい」と耳触りの良い声。
振り返らずに手で返事をしながら爆豪は駅に向かった。
****
あたりもすっかり暗くなった頃、夕食の匂いが漂う実家に帰宅した。
「ンで? 何の用があって俺は呼び出されたんだ?」
爆豪は挨拶もなしに(いつもしないが)母親に尋ねる。
親戚の法事か、あるいは家の大掃除の手伝いかと予想していたが──、
「昔、一緒に遊んでた子いたでしょ? 引っ越しちゃったけど、またこっちに戻ってるみたいなのよ〜」
「あン?」
「明日来るからアンタ、相手してあげな」
(は……?)
ニヤニヤと笑いながら母親はわけの分からないことを言う。
それだけのために呼び出されたのか?とキレそうになったが、A組の連中に悟られずにAと出掛けるきっかけをもらったのも事実である。
2人で出掛ければデートだと絶対に冷やかされる。
そういったたぐいの無用な干渉はうんざりだ。
(マジでウゼー……)
自室に入り、ベッドに腰掛ける。
鞄を放り投げてズボンのポケットに入れていたスマホを取り出した。
Aの番号を選択して通話ボタンをタップする。
タイミングが悪いとずっと轟と通話中なのだが、今日はすぐに『もしもし』と声が聞こえた。
「今帰った」
『そう、お帰りなさい』
Aが言うのにはあきらかに違うセリフが返ってきた。
『用事はなんだったの?』
「人が来るから相手しろだとよ」
『ふぅん……。明日なんだけどね。私、何時にどこにいたらいい?』
午前中いっぱいはお見舞いで無理だけど、と付け足した。
「爆豪君が家を出るのが遅くなるようなら、焦凍とそこらへんうろついてるね!」
『あ゛あン!? ──チッ、できるだけ早く連絡する』
自分と出掛ける時より嬉しそうに言うので思わず悪態をついたが、1人で歩かせるよりかはマシなので大人しく見逃した。
明日、覚悟しておけよと心の中で宣戦布告して、詳しい集合場所を話し合った。
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来冠菜(プロフ) - 完結おめでとうございます!お互い片思いだと思ってるかっちゃんと妹ちゃんが可愛いです番外編もひたすら可愛いですんんん!!!更新頑張ってください!! (2018年6月14日 20時) (レス) id: 1227e26ad4 (このIDを非表示/違反報告)
くろしば - パスワードはつけないでー!という意見に賛成!少しでも多く先生の作品を見たいのでおねがいします!! (2018年6月11日 21時) (レス) id: f11d3744b8 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - おぉ、同じ名前の人が……あ、そうそう…今回もまたまた面白いです!頑張って下さい!!!! (2018年6月10日 21時) (レス) id: cfdb26c000 (このIDを非表示/違反報告)
サヤカ - パスワードつけないでください〜〜 (2018年6月10日 19時) (レス) id: bdf11d6919 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - え!パスワードはつけないでください!見れなくなっちゃう!!_:(´ロ`」 ∠):_ (2018年6月9日 20時) (レス) id: 7ac5223945 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑪瑙 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=agate0320
作成日時:2018年6月7日 21時