もう１つの個性 ページ41
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「もう一度言う、棄権しろ」
会場を漂う冷気で、焦凍の吐いた息は白くなっていた。
審判のミッドナイトが寒さに体を震わせながら「轟さん……動ける？」と問いかける。
誰がどう見ても動けるはずがない。
しかしAはそれには何も答えずただ前を見据えた。
焦凍が近づいてくる。
負けを認めるしかないAを助けるためだろう。
(でも残念……)
ここで終わるつもりは────ない。
「……私ね。焦凍に隠してたことがあるの」
何かを感じ取った焦凍の足がピタッと止まる。
Aを覆う氷からゆらゆらと水蒸気が発生した。
それは一瞬にして氷全体に広がり、瞬く間に競技場内の氷は消えていった。
水滴１つ残っておらず、かわりに現れたのは轟々と燃える赤い炎。
「私の個性も『氷』と『炎』なんだ」
炎を背にしたAは万遍の笑み浮かべ、まるでマジックが成功したように両手を広げてみせた。
会場はざわめき立っていた。
なにせ、競技場の半分を覆っていた氷が一瞬で炎になったのだから。
観客席を見上げると、父親が身を乗り出すようにしてAを見ていた。
目が合ったAは挑発的に笑ってみせて、視線を焦凍へと戻す。
驚きと戸惑いが混じった目がまっすぐにAを見つめる。
「な……、お前……っ」
「驚いたでしょ？実は“これ”、お父さんも知らないの」
自身を囲む炎を指して言う。
知っているのは母親と叔父夫婦。
「いつから……」
「ん〜〜焦凍よりも少し後かな？ はじめは『氷』しか扱えなかった私にも『炎』の個性が発現したの」
嬉しくなって母親に報告すると、それを知った母親はひどく取り乱した。
──あの人の前でその個性は使わないで！
自慢げに見せた炎を母親は氷の個性で打ち消した。
幼いAはどうして？と首を傾げる。
双子なのに全然似てないねと言われることに不満を持っていたAにとって、それを否定されるのはとても悲しかった。
──お願い。お願いだから言うことを聞いて！
渋るAに母親は何度も言い聞かせた。
何かからAを守るように抱きしめて、何度も何度もそう呟く。
──あなたまでも、あの人に……っ。
涙ながらに訴える母親が痛々しくて、Aは頷くしかなかった。
兄にすら秘密にしていた個性。
一生、表に出すつもりはなかった。
(でも……──)
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違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みみあ - すみません…昔読んでいて何回も読み直して1番のお気に入りだったので…『原作の知識を与えられたからには全力で関わりを拒否します』のパスワードを教えて貰えませんでしょうか (2022年6月14日 19時) (
レス) id: 03be76b48c (このIDを非表示/違反報告)
椿 - イラストの方をログインユーザー限定にしないでくれませんか？ (2019年6月29日 16時) (レス) id: c09adaf99f (このIDを非表示/違反報告)
血霧の紅月(プロフ) - 絵がとてもうまいんですね！自分もあんなに上手くデジタルかけるようになりたいです！更新待ってます！ (2018年9月15日 13時) (レス) id: 1875e25498 (このIDを非表示/違反報告)
ラハル - とても読みやすく、絵もお上手で羨ましいです！^^*つづきがたのしみヽ(*´∀｀)ノ (2018年8月22日 0時) (レス) id: dcc66ec7ef (このIDを非表示/違反報告)
庄南 - 絵がすげぇー！作品も、読みやすい！ (2018年8月11日 1時) (レス) id: 46531bb7b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑪瑙
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=agate0320
作成日時：2018年4月4日 22時
