荷物 ページ28
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兄の背中が遠くなっていく。
今まではAの速さに合わせてくれたのだろう。
追いつけという言葉に頷いてはみたものの、正直難しそうだ。
(ここまで来たんだ。上出来上出来。もう……いいよね?)
なかなか体力が回復しない自分を励ます。
ガッガッと地面を蹴る音と、リズミカルに響く爆発音がすぐ後ろで聞こえた。
「ハッ! こんなトコでへばってんじゃねーよ、雑魚がっ」
爆豪が追いついた。
座り込むAに嫌味を吐いて颯爽と横を通り過ぎる────のかと思いきや。
「え……?」
爆豪はAの真横に腰を低くして着地すると、片腕で腰回りをホールドした。
直後に浮遊感。
「え?ちょ、ええぇーー……っ!?」
「ウルセー。舌噛みたくなきゃ黙ってろ」
今の状況を簡単に説明すると、爆豪に小脇に抱えられている状態だった。
なんだ私は荷物か?と問いたくなる口を慌てて閉じる。
言葉を発すれば本当に舌を噛みそうなくらいに乱暴な抱え方だった。
第三関門の手前。
「ふぎゃっ」
地雷が広がるというフィールドの前で落とされた。
そう、落とされたのだ。
わずか数十センチの高さからではあるが、手荷物状態からいきなり手を離されれば驚いて受け身もとれない。
結果、Aは変な声を出して体全体で地面に衝突した。
荷物だってもっと丁寧に扱われるというのに!
「痛い……転んだときよりも痛い……」
「こっからは自分で進めや。あと俺の前に出たら容赦なくぶっ潰す」
爆豪はそれだけ言い残して、焦凍目がけて突撃していった。
先頭で激しい攻防が繰り広げられる。
トップが何度も入れ替わり前へと進む。
後続からどんどん生徒がやってきて、1人、また1人とAを追い越していった。
(ここまでこれたから満足かな〜)
このあたりでレポートの対象になる人物を観察するのも悪くない。
むしろ良いポジションだ。
(……ん?)
地雷原を攻略するために個性を使ったり、恐る恐る回避して歩く人の中に、変な動きをしている人物がいた。
緑谷出久だ。
第一関門で交戦したロボットの部品で必死に地面を掘っている。
(あー……なるほど、賢いね)
彼の意図を汲み取ったAは安全な場所まで下がった。
その瞬間、巨大な爆音とともに先頭集団の頭上へと飛び込んでいく。
彼の策は成功し、2人を抜いてトップへ躍り出た。
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みみあ - すみません…昔読んでいて何回も読み直して1番のお気に入りだったので…『原作の知識を与えられたからには全力で関わりを拒否します』のパスワードを教えて貰えませんでしょうか (2022年6月14日 19時) (レス) id: 03be76b48c (このIDを非表示/違反報告)
椿 - イラストの方をログインユーザー限定にしないでくれませんか? (2019年6月29日 16時) (レス) id: c09adaf99f (このIDを非表示/違反報告)
血霧の紅月(プロフ) - 絵がとてもうまいんですね!自分もあんなに上手くデジタルかけるようになりたいです!更新待ってます! (2018年9月15日 13時) (レス) id: 1875e25498 (このIDを非表示/違反報告)
ラハル - とても読みやすく、絵もお上手で羨ましいです!^^*つづきがたのしみヽ(*´∀`)ノ (2018年8月22日 0時) (レス) id: dcc66ec7ef (このIDを非表示/違反報告)
庄南 - 絵がすげぇー!作品も、読みやすい! (2018年8月11日 1時) (レス) id: 46531bb7b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑪瑙 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=agate0320
作成日時:2018年4月4日 22時