ヒロイック・シンフォニー【Secret】 (ページ7)

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０２◆「今回はどうしたんですか？」ページ7

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Aは大学に通いながら、エンデヴァーヒーロー事務所で事務のアルバイトをしている。
本日も講義が終わった後に事務所に寄って、書類の整理を手伝う予定だ。

(今日は焦凍いるかなー？)

この時間帯はパトロールの可能性が高いかな……とも考えながら、都心の一角に構えるビルに入った。

「あ、Aさん。お疲れ様です」
「お疲れ様です」
「Aさん、Aさん。ちょっといいですか？」
「はい？」

事務員の１人が事務所を訪れたAを見て、ぱっと表情を明るくした。
そしてAの名前を呼びながら近寄ってくる。

「その……」

申し訳なさそうにある一点を見た。
そこにはあまり機嫌のよろしくない父親が窓の外を眺めていて、Aは彼女が何を言いたいのかを察した。

「……今回はどうしたんですか？」
「要請を受けて事務所を出ようとしたんですけど、結局すぐに解決しちゃって出番がなかったんですよ」
「あらまぁ……」

仕事の成果を出す前に片付けられたから、ちょっとご立腹なのだ。

「Aさん、お願いっ！」
「またそうやって私を使おうとするんですね……」
「だって事務所内の空気がきつい！」

確かにこのピリピリした空気の中では仕事が捗らない。
他の事務員からも同様に懇願の視線が送られる。

「出勤扱いにしておくから！お願いお願い！！」
「……分かりました」

Aは事務員たちの懇願に押し負けて頷いた。
ため息をついて父親のデスクに近づく。

「お父さん」
「……Aか」
「お茶しにいかない？私、向かいの喫茶店のチーズケーキが食べたいな」

窓の外に見えるビルを指差して父親におねだりをした。
とりあえず父親をこの事務所から連れ出す作戦。

「ぁ…………いや、しかし今はダメだ」

父親は娘からの誘いに心が揺らいだが、「今は仕事中だ」と身を引き締める。

「そっか……」
「──構いませんよエンデヴァーさん！どうぞ休憩して来てください！」
「何かあれば連絡入れますので！」

撤退しようとするAを見て、すかさず事務員たちが外出を勧めた。
そう言うなら……と父親は娘とのお茶に了承した。

＊

事務所が入っているビルから出る。
そこへちょうどパトロールから帰って来た焦凍と出くわした。

「あ、焦凍おかえり！お父さんとお茶してくるね～」
「……悪ぃな」
「いえいえ」

焦凍は「お茶する」という言葉で全てを察し、Aを労った。

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