ヒロイック・シンフォニー【Secret】 (ページ48)

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　　　「ただの俺の自己満足だ」ページ48

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Aは湯船の中でうとうとしていた。
あんなに寝たのにまだ眠い。
というのも、爆豪に体力をごっそり持っていかれたからだ。
理由は言わずもがな。

重い体を動かすのも億劫で、ベッドに運ばれる途中で意識が遠のいていった。

＊

意識が浮上するのと同時に甘い匂いを感じる。
それだけで幸せな気分に浸れる。

目を開けると大好きな人の寝顔。
その寝顔にそっと手を触れた。

(……ん？)

Aは自分の手を見て固まった。
左手の薬指の根元に、普段は感じない感触があったから変だとは思っていたが……。

(指輪……？)

ゴールドに輝く指輪。
中心には赤い宝石が嵌め込まれていた。

「え……、え……？？」

ついさっきまでなかったそれを呆然と見つめる。

動揺していると、目の前に広げていた手に大きな手が絡まった。
指から爆豪に視線を移すと、目が開いていた。

「……はよ」
「おは、よう……じゃなくて！これ……、いつ……、なんで？」

混乱気味の頭で言いたいことを必死にまとめようとするが、うまくいかなかった。
指輪が嵌められているのは左手の薬指。
つけたのはどう考えても目の前にいる爆豪だ。

「あの……これ、」
「ただの俺の自己満足だ」
「え？」

ぎゅっと、２人の間で繋がれた手に力が込められる。

「昨日、大学に迎えに行った時、視線が煩かった」
「ん？ああ。勝己君、目立つもんね」
「違ぇ」

変装していてもオーラ的なもので目立てしまうのかと納得しかけたが、違うらしい。
じゃあ何が？と視線で問う。

「男共の視線だ。お前を連れている俺への嫉妬の視線」
「えっと……」

爆豪の予想通り、Aは予想以上に大学の男子から好意を寄せられていた。
昨日でそれを実感した。

熱でフラフラのAを支える爆豪に対する視線は、鋭いものばかりだった。
爆豪はそれ以上の眼力で睨みつけていた。
サングラス越しだったので彼らには伝わらなかったようだが。

Aはまだいいと言っていたが、指輪は随分と前から用意していた。
己の独占欲を満たすために、眠っている間に指に嵌めたのだ。

これは彼らに対する牽制。
この女は自分のものだという証。
誰にも渡さないという確固たる意思表示。

「ふふ……。勝己君色だね。ありがとう、嬉しい……」

そんな爆豪の想いも知らず、Aは愛おしそうに指輪を眺めていた。

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