ヒロイック・シンフォニー【Secret】 (ページ22)

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　　　「俺が会いたかったからだよ」ページ22

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「んじゃ、帰るぞ」

満足したらしい爆豪はAから体を離すなりそう言った。
ベッドから足を降ろして立ち上がる。

「あれ？入院するんじゃ……」
「これくらいで入院すっかよ」
「え？じゃあなんで私呼んだの？必要な荷物持ってきて欲しかったんじゃないの？」

入院するにあたって、着替え等を調達するために呼び出されたと思っていた。
鍵は持っている。
でもまずAは爆豪の顔を見たかったから、自宅からまっすぐ病院へ向かったのだ。

爆豪から必要なものを聞いて取りに帰れば良いと思ったから。

「──……からだよ」
「え？」

よく聞こえなかったので聞き返した。

「……俺が会いたかったからだよ、悪ぃか」

耳を赤くして、拗ねた感じで言う爆豪にAはふわりと微笑む。

「全然悪くないよ。心配だったから嬉しい」
「アホ面から、連絡入れた時おめーが死にそうな声を出してたって聞いた」
「死にそうって……大げさだなぁ」
「それに、こういう時おめーは電話やら色々と遠慮する」

爆豪はいつもの表情を取り戻してAを見下ろす。
Aも自分のことをよく分かっている恋人を見上げた。

大きめの絆創膏が貼られた左手が、顔に伸びてきた。
同時に爆豪の顔も近づく。
Aはそっと目を閉じ──……

「ん゛ん……っ」
「！？」
「……っ」

唇が触れる前に耳に届いたわざとらしい咳払いに、２人はぱっと顔を離した。

「……お取り込み中のところ失礼します」

この病院の医師が口元に拳をあてて、扉の前に立っていた。
眼鏡の奥の鋭い瞳が２人を射抜く。

「ここは病院なのでそういうのは控えてください」
「ウッセ」
「すみません……透流(とおる)先生」

爆豪は悪態をつき、Aは頭を下げる。
透流と呼ばれた白衣を纏った若い男性医師は、ため息をつきながら病室へと足を踏み入れる。

「ダイナマイト君、本当に帰るつもりですか？」
「あ？」

一瞬だけ、透流の目に光が横切った。
彼が『透視』の個性を使った時に瞳に現れる現象だ。
レントゲンのように人体をスキャンする個性。

今、彼は爆豪の体の状態をチェックしたのだろう。

「はぁ……、骨折に打ち身。他にも軽い切り傷が多数。内臓の調子も万全ではないのに入院しないなんて……」
「……別に、そんくらい平気だわ」
「そんなわけないでしょう、まったく……」

呆れた様子で、彼はカルテに文字を書き込んでいた。

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